疎との鳥 籠の禽
眼鏡野郎と一緒にいる子が気になる
「飛雄たん……ちゅきしまが可愛いおにゃにゃのこと一緒にいる」
「山口もいるだろ?」
「飛雄たんはだから飛雄たんなのら」
「意味が分からん」
部活帰りに月島と山口が何時もの通りに帰っていると思ったら、二人と一緒に歩いている女子の姿を発見して、この尾行である。
影山はさっさと帰りたいと言うか、朔夜と二人っきりでいたいのに朔夜の興味はあの女子へ向いてしまっている。
「オタクレーダーの所、ぐっちーはオマケとみた」
「オタクレーダーって何だ」
「あの二人にらぶな気配がっ!突撃隣の晩御飯するっ!」
物陰から飛び出そうとした朔夜の襟首を素早く掴み、影山は言う。
「他人に迷惑をかけるな、何よりも月島に近寄るな」
「彼女かもぉ〜!なかよしよししたいぃ〜」
バタバタと暴れる朔夜に呆れていると、視線に気が付いて影山が顔を上げると月島と目が合った。
その表情は完全に知られたくなかったと言う顔だった。
「ツッキー……影山が海野さんの事捕まえてる」
山口の言葉に月島は素早く視線をオタップル二人から、りんへと移動していく。
そして、すぐに面倒事になると判断した月島は、りんの手を掴んで山口に言うのだった。
「山口、あのオタップル、特に海野さんの方よろしく」
「えぇー !? 」
「えっ?何っ?どうしたのっ?」
「話すよりも今は一秒でも早くこの場から逃げるのが先決だから」
それだけ言うと、月島はりんの手を引いたまま走り出す。それを見て朔夜は確信したのか、バタバタと暴れて騒いだ。
「ほらー!逃げたやん!飛雄たん離せぇー!」
「逃げられる様な事をお前がしようとしているだけだろうが!」
ギャーギャー騒ぐ影山と朔夜の姿を見て、取り残された山口は溜息を付いてから二人の所に言って、上手い具合に話して誤魔化してみるのだった。
◆
「 !? 」
翌日、昼休みお弁当を食べようとしていた所、りんは廊下から視線を感じて視線を送った。
昨日は夜で暗かったし、しっかりは見えなかったのだけれど昨日の子で間違いなかった。
(あたし……な、何かしたの)
ビクビクしていた所、後ろから現れた相手にお団子頭をチョップされると深く頭を下げられて二人はいなくなった。
状況が分からないりんはお弁当の蓋を開けまたた暫くかたまっているのだった。
(2022,6,20 飛原櫻)