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問題1
これは寝癖であって天パじゃない

 

 

「やーいやーい、天パ女――!」

 そうからかわれ、少女は自分の髪の毛を触ってから言った。

「これは天パじゃなくて寝癖だって言ってるでしょうがァァァァァァァ !!」

 少女の拳は見事アッパーを繰り出すのだった。


 


江戸のトラブル娘
問題1 これは寝癖であって天パじゃない

 



「全く。人を天パ天パって失礼だよ !警察呼ぶよ !! 」

 ずびっと指を指して言い切った少女に少年は顎を押さえながら言った。

「警察呼ぶのはこっちだってのォォォォ !! 顎外れるっての !! 」
「寝癖と天パの見分けの付かない奴の顎なんか外れちゃえば良いんだよ!」

 腕を組んで言い切った少女に少年は呆れ顔で見て呟いた。

「……可愛くね――」
「何か言った?」
「……や、何でもねぇ」

 冷や汗ダラダラで目を泳がせている少年に向かって少女はずびっと言うのだった。

「寝癖を舐めるなよ」





「んぁ――――帰りにチュッパチャップス買って帰ろうかなぁ……コーラ味三十本くらい」

 そんな事を言いながら帰り道を歩いていると後ろから豪速球で走ってきた少年が叫びながら言った。

「お――ま――えェェェェェェェェ !! 」
「ん?」

 後ろを振り返るのと同時に少女は少年の拳を顔面に受けるのだった。

「イタァァァァァァァァァ !! 鼻骨折れっ………折れるゥゥゥゥゥゥゥ! 」

 鼻を押さえつけて悶える少女に少年は言う。

「ヲイ !! 優姫、何日直サボって帰ってるだよ !! 」
「ふぇ…………日直?」

 優姫は涙目で少年を見上げて少ししてから言った。

「あれ?私日直だったっけ ? 貴史」
「日直だって言ってるだろうがァァァァァ!」

 スパーン、と頭を叩かれ、優姫は痛そうに押さえるのだった。

「いった――い !」
「痛くやったんだから当たり前に決まってるだろうが!さっさと戻れ !! 」

 貴史に言われ、優姫は少し考えてから言った。

「じゃあ……戻るからコンビニでチュッパチャップスコーラ味三十本買ってきて」
「お前一人でそんなに食ったら糖尿病間違い無しだってのォォォォォ !!」
「……買ってきてよ」

 じーっと見上げて言う優姫に貴史は溜息をついてから言った。

「分かった分かった、買ってきてやるからお前先に学校戻ってろ」
「わーい、貴史ありがと――」

 にこにこと見上げて言うに優姫に、貴史は顔を赤くして一歩下がった。

「たかしー?」

 何で急に下がったの?と言わんばかりの表情で見ている優姫を見て貴史は思うのだった。

(こいつ……寝癖の事で暴走してなければ可愛いから……つーか自覚しろよ !! )

 ドキドキと早く動く鼓動を押さえつつ貴史は言った。

「何でも良いから早く戻ってろ!」
「う……うん」

 優姫は何がなんだか分からず首をかしげつつも頷くのだった。





「えっと……日直のお仕事は……」

 今からやるべき事を指折りで数えながら歩いていると、背後よりゾワっとくる悪寒を感じバッと振り返った優姫はぽかーんと見上げてしまった。


 なんか黒くてモヤモヤもふもふドロドロでろでろしてるのがいる。


「いぎっ……」

 本能で危険だと察した優姫は猛ダッシュで学校に向かうのだった。

「イヤァァァァァァァァァァ !! なんかっ……黒っ!黒すぎだよォォォォォ !!」

 混乱が酷いのか色の事を気にして走っていると、また背後から叫びながら走っている貴史が来て言う。

「おまっ……今度は何をしたんだァァァァァァァァァ !! 」
「何もしてないよ―― !! 急に付いてきたァァ !! 」

 半べそで叫び走る優姫を見て、貴史は言う。

「俺がこの訳分からんの引きつけるからお前取りあえず先生に助け求めに行けっ!」

 どん、と優姫の背中を押すと貴史は黒いのに向き合った。

「貴史っ !! 」
「俺は平気だ!いいから止まるな!早く行け!」

 持っている袋を使って黒いのに攻撃をしている貴史を見て優姫は叫んだ。

「私のチュッパチャップス !! 」
「テメェェェェェェェェェェェ !! 俺の心配じゃねーのかよ!」

 怒りに身を震わせる貴史を見て優姫は付け足して言った。

「それと貴史 !! 」
「俺の存在はチュッパチャップス以下かこの野郎ゥ!」

 怒鳴りながらも持っていた袋を優姫に投げるのと同時に言うのだった。

「走れ!とにかく走れ !! 」

 投げられた袋をキャッチし、返事をしようとした瞬間、優姫は見上げて言った。

「あ、上から降ってき……」

 言い終わる前に黒いのが優姫を飲み込んだ。

「優姫―――― !!」

 貴史の叫び声を聞きながらも、優姫は呑気に考えているのだった。

(あ………日直………)

 サボれるなぁ……とチュッパチャップスの入った袋をぎゅっと握りしめながらに思うのだった。
(2006,8,11 飛原櫻)

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