疎との鳥 籠の禽
問題6
モジャモジャぱーらめんと
「まあ確かに優姫ちゃんから目を離した私達に問題はあります。けれど一ヶ月以上屯所から出してもらえない優姫ちゃんの気持ち、考えた事があるのですか?」
「「「 ……は、はい…… 」」」
「今回の事は近藤さん達にも問題があるのですからね」
「「「 ……ごもっともです 」」」
屯所へ戻って来るや近藤達は菊に説教されてしまうのだった。
江戸のトラブル娘
問題6 モジャモジャぱーらめんと
「優姫ちゃんの事を可愛がるのは全く問題無いですよ。だけれど優姫ちゃんは育ち盛りの子供なんですよ?ずっとこんな所に閉じこめられてたら、抜け出したくなっちゃうに決まってるじゃないですか」
プンプンと怒って言う菊に局長である近藤すら何も言い返せずにいた。
「全く……今回は何も無かったから良いですけれど、もし優姫ちゃんが怪我でもしたらどうするんですか」
ある意味近藤よりも強い立場にいる菊の説教を障子の向こうから優姫は心配そうに見ていた。
「本当に優姫ちゃんが大切だったら彼女の意見も取り入れてあげなきゃ駄目でしょう」
「……申し訳ないです」
しゅん、と縮こまって言う近藤にジュースを持って来た山崎が言った。
「わ――久しぶりに見るなぁ、お菊さんの説教」
「退に―ちゃん」
「はい、優姫ちゃんのジュース」
冷えたジュースの缶を渡され、受け取りながら尋ねてきた。
「私の所為?」
シュン、と小さく言った優姫に山崎は苦笑いをしながら答えるのだった。
「いや――でもまあ丁度良いお灸かもしれないよ。ずっと屯所に優姫ちゃん閉じこめておくんだからさ」
そう言われても、ガミガミと怒られている近藤達を優姫は心配そうに見つめるのだった。
◆
「優姫ちゃんも危ないから一人で出かけたりしちゃ駄目だからね――」
「は―い」
二時間にも渡る説教がやっと終わり、菊は優姫の頭を撫でながら言っていた。その明らかに差別としか取れない行動に、十四郎はぼそっと言うのだった。
「……俺達の時と明らかに対応が違うじゃねェか……」
「当たり前でしょう。元々優姫ちゃんが屯所抜け出しちゃったのは、アンタ達の軟禁が原因なんだからね」
はっきりと腕を組みながら言った菊に総悟もぼそっと漏らした。
「……だけどォ俺達の説教は二時間でェ、優姫への説教は一言ですかィ」
さすがに二時間も説教されれば総悟であれども疲れてしまう。ぐったりとしている三人をよそに菊は優姫に言う。
「あ、それから説教と一緒に優姫ちゃんの外出許可取ったから、今日から自由に外に遊びに行っていいんだよ」
その一言に優姫はパァっと顔を輝かせて言ったのだ。
「本当 !? それなら私行きたい所あるの !! 」
元気よく手を挙げて言う優姫に菊は山崎に向かって言った。
「近藤さん達疲れてるみたいだから退君連れていってあげてよ」
「了解です」
びしっと敬礼して言った山崎は優姫に言うのだった。
「で、何処に行きたいの?」
「あのね……」
◆
「此処がそうなの?」
「ですねェ……ほら、万事屋銀ちゃんって看板ありますし」
「でも下にはスナックお登勢って書いてあるー」
「一階がスナックで二階が万事屋なんでしょうね」
山崎と一緒に優姫はそう話をするのだった。
◆
『あのね私此処に行きたい!』
ずぃっと山崎に見せたのは名刺であり、万事屋銀ちゃん 坂田銀時と書かれているのだった。
『万事屋銀ちゃん……?』
見入る様に名刺を見て言うと優姫は笑顔で言った。
『坂田のに―ちゃんとお友達になったから遊びに行くの』
にっこにこと答えた優姫に倒れていた近藤が叫ぶのだった。
『優姫ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!に―ちゃん置いて知らない所に行かないでェェェェ !! 』
『五月蠅いよ、近藤さん。良いじゃない好きな所に行かせてあげれば』
きっぱりと菊がそう言い、優姫と山崎を送るのだった。
◆
「取りあえず行ってみますか」
二階へ上がる階段を見つけた山崎がそう言って優姫を見ると、一階のドアをガラガラと開けていた。
「いやそっちじゃないよ絶対に !! 」
二階への階段を全く無視してスナックの扉を開けた優姫に、山崎は素早いツッコミを入れるのだった。
「いらっしゃ…………おや、此処はお嬢ちゃんみたいな子が来るところじゃないよ」
カウンターで煙草を吸っていた老女にそう言われ、優姫は尋ねた。
「此処に坂田のに―ちゃんいるの?」
「坂田の……?ああ銀時の事かい。奴なら今ちょっと出かけてるけど仕事の依頼人かい?」
ふーっと煙を吐きながら言った老女に優姫は笑顔で答える。
「えっとねお友達になったから遊びに来たの」
「全くアイツもタイミング悪い時に出掛けてるねぇ。まあいつ帰ってくるか分からないし何か飲ませてあげるよ」
「いいの !? 」
パァッと目を輝かせて尋ねる優姫に老女はしっかりと頷く。にこにこと見てくる優姫を見て老女は手招きするのだった。
「退にーちゃん、入ろうよ !! 」
「あ~~一応仕事中だから優姫ちゃん一人で行っておいで」
ここで待ってるから、と山崎に言われ優姫はむぅっとしつつも一人中へ入った。
「おや、連れは入らないのかい?」
「お仕事中だから外で待ってるって」
「そうかい。ほらオレンジジュース」
コト、とカウンターにコップを置いてもらい、優姫は喜んで飲みながら尋ねる。
「おば―ちゃんは坂田に―ちゃんのおば―ちゃんなの?」
首を傾げて尋ねてくる優姫に、老女はきっぱりと言うのだった。
「あんな孫冗談じゃないね。アレは上に住んでる奴だよ」
「じゃあおば―ちゃん大家さんなの?」
興味津々に尋ねてくる優姫に老女は煙を吹きながら言った。
「そうだよ。だけどあいつ家賃滞納してばっかりでお嬢ちゃんからも何か言ってやってよ」
そう言われう―う―唸っているとガラガラガラと扉が開いてやる気の無い声が聞こえた。
「ババァ――なんか食わせてくれ」
「アンタにやる飯なんか一つもないよ。それよりお客さんだよ」
「はぁ?」
やる気なさげに顔を上げた銀時だったが、カウンターに座っている優姫の事を見て飛びつくのだった。
「優姫ちゃんじゃないの~~どうしたの?銀さんに会いに来たのか」
ぎゅむ―っと抱きしめて言う銀時を見て老女は呆れ顔で言うのだった。
「アンタ何時の間にそう言う趣味になったのさ」
「良いだろ別に――――」
わしゃわしゃと頭を撫でながら満足げに言っていると、続く様にひょっこりと顔を出した新八が言った。
「お登勢さん、銀さん見て……ってあれ、優姫ちゃん?」
銀時の腕の中にすっぽりと収まっている優姫を見て言うと、新八の後ろから神楽が飛び出して言うのだった。
「優姫久しぶりアル――!」
銀時の事を蹴り飛ばして優姫に飛びつくと新八が慌てて言う。
「ちょっと神楽ちゃんの怪力で人抱きしめたら死んじゃうってば !! 」
「大丈夫アルよ。ちゃんと加減してるアル」
なでなでと頭を撫でながら誇らしげに言う神楽に優姫はにぱっと言う。
「神楽ね―ちゃん」
「妹よォォォォ !! 」
物凄く嬉しそうに言った神楽を見て新八は納得するのだった。
「ああ、そう言う事ね」
「……てゆーか銀さんの事無視するなんて酷くない !? 」
がばっと起きあがった銀時に優姫はへらっと声を掛けた。
「坂田にーちゃん大丈夫?」
「全然大丈夫だから」
ぎゅっと優姫の手を握りしめて言うと登勢から突っ込まれる。