疎との鳥 籠の禽
問題6
モジャモジャぱーらめんと
「なら最初から言うんじゃないよ」
「気持ちの問題だ、気持ちの」
はっきりと言い切った銀時に登勢は大きく溜息をつくのだった。
「それにしても急にどうしちゃったのさ。銀さんに会いたくて会いたくて淋しくなったのか?」
デレデレと優姫を抱きしめながら言うとへらっと返事を貰うのだった。
「えとね、外出許可貰えたから遊びに来たの―」
「じゃあ銀さんと一緒に夜のかぶきちょ……」
真顔でそう言いかけた銀時の頭に神楽の傘と新八の木刀がめり込んだ。
「遊ぶなら一緒に何処か行くアルね―」
「遊ぶなら何処がいいかなぁ……。あ、どうせなら姉上紹介してあげたいな」
何事も無かったかの様に相談をしている二人に、ガバッと起きあがって銀時は怒鳴るのだった。
「ちょっとォォォ!二人とも酷くない !? 」
「変態は容赦しなくて良いアルね」
「うんうん。優姫ちゃんの事を考えての事だし」
即答をする二人とがくっと項垂れる銀時を見て優姫は笑顔で答えるのだった。
「みんなのお仕事してる所見たい」
◆
「いつも此処で依頼を待ってるんだ」
『仕事を見たい』と言われても万事屋である為何時仕事が入ってくるかどうかが全く予測出来ない為、取りあえず二階へ案内する事にしたのだ。
「普通のお家だ―」
きょろきょろと興味津々に歩いている優姫はふと目に付いた文字を見て言う。
「『糖分』?」
でかでかと書かれている糖分と言う二文字をじーっと眺めていると新八が説明するのだった。
「ああコレ?銀さん甘いモノ大好きだから」
「俺定期的に甘いモン摂取しないと駄目なんだよ」
ぼりぼりと頭を掻きながら答える銀時の事を見てから、もう一度額を見ようとした時に机の上に見覚えのあるモノを見て指を指した。
「あ、私があげたチュッパチャップス」
其処には一ヶ月前に銀時にあげたチュッパチャップスが未だ封を開けられずに置かれていたのだ。
「まだ食べて無かったの?」
首を傾げて尋ねると銀時はチュッパチャップスを大切そうに取ると答えた。
「そりゃあ優姫がくれたモンだぜ。食える訳ねぇだろう」
スリスリと頬ずりをしている銀時を無視し、神楽と新八は優姫を呼ぶ。
「銀ちゃん変態だから気にしたら駄目アルよ」
「優姫ちゃんに手を出さない様にしっかりと監視するから安心してね」
何故此処まで意気込んで言っているのか分からずに優姫は首を傾げた。
◆
「ほれ――楽しいか――」
「きゃ―きゃ―」
銀時の椅子に座らせてもらい、くるくると回してもらって優姫はご機嫌でいた。
「お茶で良いですよね」
台所から四つ湯飲みを持ってきた新八に神楽が答える。
「ご飯持ってくるアルね!」
「まだご飯の時間じゃ無いよ !! 何時だと思ってるさ !! 」
「三時アル」
「威張るな !! 」
ぎゃ―ぎゃ―と騒ぐ二人を見て優姫は楽しそうに言うのだった。
「此処凄く楽しそう」
「そうだろ――?優姫も此処に住んで良いんだぞ――」
ぎゅ―っと優姫の事を抱きしめながら銀時が言うと、優姫は笑顔で答えた。
「私のお家は屯所なの―」
悪気無くはっきりと言われ、銀時は地味にダメージを受けた。
「でもたくさん遊びに来たいな」
にぱっとそう言われ銀時は嬉しさにぎゅーっと抱きしめる。
「も――本当に可愛いすぎだっつ―の」
「坂田にーちゃんは格好いい――」
にっこりとそう言われ、銀時は悶えるのだった。
◆
「あ、そろそろ帰らないと」
時計を見てからひょいっと椅子を降りて優姫が言うと、銀時も神楽も淋しそうに言い始める。
「もう帰っちゃうの~~銀さん淋し~~」
「私もっと優姫と遊びたいアルね!」
そんな二人と対照的に新八は当たり前の様に言うのだ。
「二人とも何言ってるですか。あ、優姫ちゃん全然気にしないで帰って良いからね」
「うん」
大きく頷いて帰ろうとしたら銀時が抱きついてきて言うのだった。
「次何時遊びに来てくれるの~~銀さん向かえに行くから~~」
「オイ駄目人間離さんか」
べりっと銀時の事を剥がしてから新八は笑顔で言った。
「まあ僕ら仕事の依頼が来ない限り基本此処にいるからいつでも来て良いからね」
「うん、またね!」
ぶんぶんと手を振ってからぱたぱたと玄関へ走っていく優姫の後ろ姿を見ながら、銀時はうだうだと文句を言い始める。
「あ~~優姫ちゃん帰っちゃうからもうやる気ね――」
「何言ってるですか。夕飯の買い出し行きますからね」
「私卵かけご飯が食べたいアル!」
元気よく会話する声を聞きながら優姫は階段をカンカンと降りて言った。
「退に―ちゃん、お待たせ!」
「もう良いかい?」
優姫が戻ってきたのを見て山崎は立ち上がって尋ねた。
「うん、たくさん楽しんできたよ」
にっこにこと答える優姫を見て満足そうに微笑んで言う。
「じゃあ帰ろうか。そろそろ局長も土方さんも騒ぎそうだから」
「うん」
先に歩きだした山崎の後を追いながら優姫はぼそっと言った。
「モジャモジャぱーらめんと」
銀時の天パに優姫は何かしら似たようなモノを感じた様だった。
(2006,7,27 飛原櫻)