疎との鳥 籠の禽
問題7
おにーちゃんはゴリラ、
おねーちゃんもゴリラ
「好きな人が出来たの?」
「そうなんだよ~~。菩薩みたいな(ruby:女性:ひと)でね、凄く綺麗な人なんだよ」
優姫はそんな風に近藤の話に耳を傾けているのだった。
江戸のトラブル娘
問題8 おにーちゃんはゴリラ、おねーちゃんもゴリラ
「お妙さんって言ってな、この先の道場に住んでいるのだよ」
「わ――早く会ってみたいな―」
優姫は近藤に付き合い、その惚れたと言う妙の居る家へ向かっているのだった。
「優姫ちゃんもきっとお妙さんの事が好きになるよ、絶対に」
「えへへ、楽しみ」
近藤の惚れた相手だからきっと優しくて綺麗で素敵な人なのだろうなぁ、と優姫が思い向かっていくと目的の道場へたどり着いた。
「わ――大きな道場」
ソワソワと道場の門を探しているといきなり近藤が電柱を登り出した。
「近藤に―ちゃん?」
門はあっちにあるよ、と言おうとした瞬間近藤は大きな声で叫ぶのだった。
「お妙さァァァァァん!結婚してくれェェェェ !! 」
いきなりの行動にぽかーんと見上げていると騒ぎに段々人が集まって来る。だが近藤はそんな事を一切気にする事なく叫び続けるのだった。
「一度や二度フラれたくらいじゃ俺は倒れんよ !! 女はさァァ愛するより愛される方が幸せなんだよ !! って母ちゃんが言ってた」
どーしようかと見上げていると騒ぎを聞きつけたお巡りさんがやって来て叫んだ。
「こらァァァァ何やってんだ!近所迷惑だ降りてこいコノヤロー !! 」
お巡りさんの存在に気付き、近藤は誇らしげに答えるたのだ。
「お巡りさんおちつけェェェェ!俺は泥棒は泥棒でも恋泥棒さ !! 」
「何満ち足りた顔してんだ!全然うまくねーんだよ!降りてこい !! 」
近藤とお巡りさんのやりとりに困りながら、取りあえず門の方へ行き中を覗いてみる。その間も近藤は叫び続けている。
「お妙さァァァァァん!顔だけでも出してくれないかな~~~~ !! 」
ひょっこりと中を覗き込むと丁度縁側に一人の女性が出てきた。その女性を見て、近藤は顔を輝かせて言った。
「お妙さん !! 」
と、言う声と同時に近藤の顔面に灰皿がクリーンヒットして電柱から真っ逆さまに落ちていく。
「近藤に―ちゃん !? 」
その光景を見て慌てて駆け寄ろうとした時、女性の奥の方から聞き覚えのある声がしたのだ。
「あれ……今の声」
ひょっこりと縁側に顔を出したのは新八だった。
「優姫ちゃん?」
新八は眼鏡をかけ直しながら優姫の姿を何度も確認していた。
◆
「よかったじゃねーか、嫁のもらい手があってよォ」
その後、新八とその姉の妙に連れられて優姫はレストランに来ている。
「帯刀してたってこたァ幕臣かなんかか?玉の輿じゃねーか、本性バレない内に籍入れとけ、籍!」
銀時がそう答えるのと同時に妙は銀時の頭を掴んでそのままテーブルに押しつけるのだった。
「あ、優姫ちゃん。紹介が遅れちゃったけどね、この人が僕の姉だよ」
「……う……うん……」
控えめに答えた優姫に銀時は顔を上げて言った。
「お、新八お前のね―ちゃんゴリラ過ぎるから優姫が怯えちゃってるじゃないか」
「誰がゴリラよ、誰が」
再び銀時の顔面をテーブルに押しつけながら妙は説明した。
「最初はね、そのちう諦めるだろうと思ってたいして気にしてなかっただけど」
妙は今までの事を思い出して話を続けた。
「……気が付いたらどこに行ってもあの男の姿がある事に気付いて。ああ、異常だって」
そう真面目に話していると横からおじさんの声がした。
「ハイあと三十秒」
「ハイハイラストスパート。噛まないで飲み込め神楽。頼むぞ、金持ってきてね―んだから」
そう言う銀時の隣で神楽は先ほどから無言でジャンボラーメンを食べていた。
「き――てんのアンタら !!」
すかさず新八のツッコミが来て、銀時は面倒臭そうに答えたのだ。
「んだよ、俺にど―しろっての。仕事の依頼なら出すもん出してもらわにゃ」
「銀さん、僕もう二ヶ月給料もらってないんスけど。出るとこ出てもいいんですよ」
きっぱりと即答した新八の隣に座っていた優姫が妙の事を見ながらぼそっと漏らした。
「……菩薩?」
「「「 は? 」」」
急に何を言い出すのだと皆で優姫を見ると笑顔で答えた。
「えっとね、近藤に―ちゃんがね『お妙さんは菩薩みたい女性でね、凄く綺麗な人なんだよ』って言ってたから……」
その一言に妙は表情を変えて問う。
「……ちょっとアンタ、あのゴリラとどういう関係?」
「う?」
「あああ姉上落ちついて !! えっと……」
新八が困った表情で優姫の事を見てきたので笑顔で答えていた。
「えっと近藤に―ちゃんは私のお兄ちゃんだよ」
「テメェあのクソゴリラの妹かァァァァァァ !! 」
ぐわっと顔色を変えて優姫に蹴りを入れようとした妙を新八は急いで押さえて言う。
「姉上落ちついてェェェェェ!優姫ちゃん全然無関係だってば !! 」
「ゴリラの家系からこんな愛らしい妹生まれる訳ねェだろうゥゥゥゥゥゥ !! 」
すかさず立ち上がって言う銀時に新八は怒鳴り突っ込む。
「どーでも良いでしょうが !! 」
「優姫って屯所に住んでるアルよね?」
ラーメンを食べきって満足そうにしている神楽がそう言い、銀時は思い出した様に手を叩く。
「そ―言えばそうだ。つ―事は近藤って名前は真選組の局長じゃね―かよ。超玉の輿じゃん。やっぱり籍入れろ籍」
「人の話聞いてたの?」
本日三度目のテーブル押しつけ攻撃に銀時は立ち上がって言った。
「ストーカーめェェェェ!どこだァァ !! 成敗してくれるわっ !!!! 」
「なんだァァァァ !! やれるものならやってみろ !! 」
銀時に反応する様に近くのテーブルの下から近藤がガタガタと出てきたのだ。
「ホントにいたよ」
変な所からとは言え、本当に近藤が出てきた為新八は呆れ顔で言っていた。
「ストーカーと呼ばれて出てくるとは馬鹿な野郎だ。己がストーカーである事を認めたか?」
「人は皆愛を求め追い続けるストーカーよ」
近藤はそう言い切ってから妙と優姫の事を見て銀時に言い放った。