疎との鳥 籠の禽
二次元オタクは童貞を殺したいらしい
何時も騒がしい朔夜がしおらしく、耳まで真っ赤の顔になっていて。
「……さく」
スっと頬に手を宛てがい、逃げない様に顔を固定する。ビクッと目を閉じ薄目がちに朔夜は目を開いた。
やっぱり目の前には影山の顔が合って、今にも触れ合ってしまう程に近かった。
「とび……ぉ」
小さく呼び捨てで呼ばれ、影山が動く。
唇は触れそうで触れない。
「…………めっ」
だが、朔夜の手が影山の口を塞いでしまう。
分かっていたけれど、これだけムードが出ても決めたルールは絶対の効力だった様だ。
「…………それは、恥ずかしい」
小さく縮こまる朔夜の肩から腰に向かって手を滑らせながら、影山は確認してみた。
「コレは恥ずかしくないのか?」
チラッと朔夜は自分が着ている服を確認して、影山の胸元に顔を隠して言った。
「……ちょっと恥ずかし。…………でも」
「でも?」
尋ねると、朔夜は小声で言う。
「……飛雄、着て欲しかったんだよね?」
「…………俺の為?」
「うん」
そう言うとまた胸元に顔を埋めてしまった朔夜に、影山は嬉しくて頭がおかしくなるかと思ってしまった。
自分の為に着てくれた、なんて嬉しいに決まっている。
朔夜がデレでくれているのも嬉し過ぎるし、正直鼻血が出そうな位にまて興奮してしまう。
(ほんっと可愛くて無理……普段のとギャップがあり過ぎ)
スルスルと首筋と肩を行きゆきさせながら撫でてやる。撫でられるのが気持ちいいのか、朔夜は大人しくしていた。
無意識にだろうが、朔夜が胸元を手で隠すのでそっと手首を掴んで隠せない様にしてみる。
それから、改めて朔夜の身体を見た。
開かれた胸元の肌は白くて、しっかりと膨らんでいる乳房はやっぱり大きい。それから動く度にチラチラと見えている乳房の先端を、影山が見逃す訳が無かった。
「……まだ見る?」
「ずっと見てたい」
「……楽しい?」
「楽しいんじゃなくて、飽きない」
「……えっち」
「男なんてそんなもんだろ……」
見られるのを恥ずかしいと小さくなってしまうので、ギュッと抱きしめてやった。
それで安心したのか朔夜も抱き着いてきた。頭を撫でていると、抱き着いていたいた朔夜がボソッと言った。
「……ごろん」
朔夜の言いたい意味が影山にはすぐに分かったので、抱きつかれたまま仰向けになって、朔夜を上にした。
ぱさりと朔夜の髪の毛が落ちてきたので、くるくると指で絡み取りながら、身体が見える様に退かしておく。
「さーく」
「なぁに?」
「呼んだだけ」
「へむ」
少し恥ずかしいと言う気持ちが落ち着いたらしい朔夜の頭を何度か撫でていると、嬉しそうに笑っているのだから欲が出て来た。
(尻位なら、触ってもいいか……)
スススっと手を下げていくと、気が付かれたらしくてぶにっと両頬を引っ張られてしまった。
頬を外側に引っ張りながら、頬を膨らませていた。
「ちょっとだけ……」
「駄目っ!」
「えっちな事はしないから」
「お尻はえっち!」
「パンツ良く見せてる癖に」
「今日は駄目っ!」
そう言いながら朔夜は、ベッドの端に積まれている自分の服の方を指さす。服が何だ、と見た影山は一番上に積まれている物を見て固まった。
ブラジャーをしていないのは、開けた胸元で理解していた。
けれど……。
「おま……パンツまで履いてないとか聞いてねぇ……」
力無く倒れた影山に朔夜はドヤ顔で言い切った。
「やる時は全力投球!」
「……お前は馬鹿か…………」
「いや、だってね」
ぽすん、と影山の上に倒れ込みながら、朔夜は言った。
「童貞を殺すセーターは、全部脱がなきゃ駄目な気がする」
だからと言って本当に脱ぐ奴がいるか、と影山はツッコミを入れたかった。そりゃあ全裸の上に着ているのならば、あれだけ朔夜が照れていたのも納得である。
朔夜が裸であると認識してしまうと、急にその柔らかさが気になって仕方ない。
女の身体はやっぱり柔らかくて心地よい。それは朔夜もである。
「そうだけど……馬鹿野郎…………」
「なんで馬鹿言うー!」
影山の言葉にバタバタと朔夜が暴れるので、素早く服の裾を掴んで影山は言った。
「頼むから……もう動くな……」
影山は改めて童貞を殺すセーターの破壊力と、朔夜の馬鹿さ加減を認識しているのだった。
(後で写真撮っておこ……)
上手い具合に朔夜のご機嫌を取って、写真を絶対に撮るとそっと影山は心に誓った。
そして、案外アッサリとアニメイトで欲しい物買ってやる、と言ったらツーショットの自撮りにはなったが、無事に童貞を殺すセーター姿の朔夜を撮る事が出来たのは秘密の話。
(2021,5,18 飛原櫻)