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バレーオタクは
お胸が触りたいらしい

 

 

 一度知ってしまうと忘れられない。
 柔らかくて暖かい感触。
 もう一度それを感じたいと、思って過ごしていたある日の朝。
 目覚めたら股間がギンギンに勃っていた。

「…………夢かよ、くっそ……」

 遂に我慢出来なかったのか、夢の中で朔夜の胸を揉んでいた。
 柔らかかったなぁ、と思い出してみるが結局それは夢であると思い出して、萎えてしまうのだった。



バレーオタクはお胸が触りたいらしい



「なぁ、朔夜」
「駄目ー」
「…………まだ呼んだだけだろ」

 影山の家、影山の部屋、影山のベッドの上でゲームをやっている朔夜は、顔も上げずに答えていた。

「だって何考えてるか知ってるもん」
「……じゃあ言ってみろよ」
「おっぱい揉みたい。はい、駄目ー」
「何で分かったんだよ……」

 影山の方を見ようとせず、カチャカチャと機械のボタンを押しながら、朔夜は涼しそうな声色で言う。

「だって飛雄たん、今日私の胸しか見てないやーん。前科者の考えなんか分かるばい」
「……そんなに見てたか?」
「うん、ガン見。あ、ピカチュウ死んだ」

 影山には興味の欠片もないらしく、朔夜のゲームをする手は止まらない。そもそも影山の事を見ようともしないのだ。

「……減るもんじゃないんだろ」

 ぽふっと朔夜の腰に顔を落としても、朔夜は微動だにせずに言い続けている。

「高校生の間はそう言うえっちぃ事は禁止、ってルールでしょ?」
「……ソウデスネ」

 キスも駄目なのに、胸は触っていいなど確かにおかしい話である。
 ルールの話が出た時点では、影山もそう言う事に興味が無かったと言うか、そもそも朔夜に対して明確な好意が無かったので了承したのだ。
 でも朔夜の事を彼女だと認識して、好きだと自覚したら話は別になる。
 恋人らしいスキンシップはまだ少ないが、手だけでも朔夜に触れていると心地良いし、腰に顔を置いている今も正直に言うと幸せだ。
 でも、満足の域には達しない。

「…………スカートの下履けって言ってるだろが」

 チラッと下半身の方に視線を動かしたら、スカートが上がっていてパンツが見えていたので、ついっとスカートを引っ張って隠す。

「飛雄たんパンツ泥棒だ」
「……盗んでねぇだろう」

 こうやってスカートを触る事に関しては怒られない。
 腰に顔を置いても怒らない。
 朔夜の良いと駄目のボーダーラインが分からなすぎて、影山は手が出せずにいる。

 なので、逐一確認する様に言っているのだ。

「…………耳掃除したいか?」

 ボソッと言ってみると、ピクッと朔夜が反応した。
 じーっと影山の事を見たと思うと、ガバッと起き上がって座り直すと、パンパンと膝を叩いて言う。

「やるやる!耳掃除やる!」
「……起き上がる時は言ってくれ」

 首を抑えながら言うが、朔夜の興味はもう耳掃除になっていて相手にしてもらえない。
 ぽすっと膝の上に頭を置き、耳掻きを渡すと朔夜は上機嫌で耳掃除を始めた。

(膝枕は許容……)

 耳掃除に集中しているのを確認してから、そっと膝を触ってみる。
 朔夜が怒る様子は無かった。

(膝は許容……もしくは耳掃除で優先度が低い)
「飛雄たん反対反対!」

 朔夜の声にゴロン、と朔夜の身体の方に顔を向ける。
 触りたい乳房が目の前にあるのに、触れないのが悔しい。

(太腿気持ちいい……)

 頬擦りしたいと思いながらも、乳房を見ていたら気が付かれたらしく、視界がいきなり暗くなった。
 何が起きたのかと理解しようとして、視界に入ってきた物を見て固まった。
 目の前に広がる光景は緑色のレースと刺繍がある布。
 それが下着であると理解した瞬間に、顔がスカートの中にある事に気が付く。

「なっ !! 」

 慌てて動こうとしたら、横顔にぼふっと柔らかい塊が乗り、朔夜の声が聞こえた。

「今でっかい耳くそ見付けた!動いちゃ駄目っ!」

 がっしりと掴まれ、鼻先にはパンツ、横顔は乳房で茹でダコの様に真っ赤になり、力が抜けてしまった。

「それから飛雄たんまたおっぱい見たでしょ!えっち!」
「…………いや……今俺の目の前にお前のパンツが見えるのは良いのか……?」
「パンツは良し!おっぱいは駄目!」
「ソウデスカ……」

 下半身を見られる方が嫌なのではないかと思いつつ、朔夜の言い分にカタコトで答える。

「スッキリしたいから動いたら駄目!」

 朔夜にそう言われたが、そもそも目の前にパンツが有って、影山は身体に力が入らない。
 朔夜の生肌も気持ちが良いし、下半身を見る事に関しては許可が出ているので、ついつい凝視してしまう。

「でっかいの取るまで動いたら駄目っ!」
「……分かったから、早くしてくれ…………心臓が持たない」

 ぐったりとしつつ言うとやっと朔夜が前屈みを止めたらしく、横顔に乗っていた柔らかいモノが離れていった。
 耳の中に異物感を感じたので、耳掻きが再開されたのだと思いながら溜息を漏らしてしまった。
 よくよく考えると確かにパンツはちょいちょい転がっている時に見えているので、朔夜にとって今更なのかもしれない。

(……はぁ)

 ただ、影山がどうしても触りたくて仕方ないのは胸だ。パンツを見ていても、と言う気持ちがどうしてもある。

「取れたっ!すっきりぃ〜」

 声が聞こえたと思うと肩をぺしぺし叩かれたので、起きろと言う事なのだろうともそっと起き上がった。
 耳掃除に満足したらしく、朔夜の表情はほこほこだった。そんなに他人の耳掃除が楽しいのかと、影山には理解は出来ないが朔夜が喜べるならばそれで良かった。

「…………」

 無言で朔夜の頬を触ってみる。
 何度触ってみてもやっぱり柔らかくて、心地良い。暖かいし、スベスベしている様な気もするのだから。

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