疎との鳥 籠の禽
問題11 お花見ワッショイ
「お花見―――― !? 」
朝からパタパタと忙しい屯所に不思議に思い十四郎に尋ねた優姫は嬉しそうに言っていった。
「真選組毎年恒例行事だな」
「行く行く―― !! 私も行く―― !! 」
優姫はめいいっぱい手を上に挙げて言うのだった。
江戸のトラブル娘
問題1 お花見ワッショイ
「おっはなみっおっはなみっ」
上機嫌で花見会場へ向かっている優姫の後ろ姿を見て総悟は言った。
「優姫嬉しそうですねェ」
「こんなに大人数で花見するのは初めてだって言ってたからな。まだまだガキなんだよ」
煙草の煙を吹き出して十四郎はそう言った。
「まァ優姫は其処が可愛いんですよ。ガキが嫌いでしたら優姫は俺に渡してもらいましょうかィ」
さらっと黒くなった総悟に青筋を立てている十四郎の姿を見て、優姫は不思議そうに首を傾げた。
「きれ――い!」
花見会場に着くと其処は一面の桜色でたくさんの花見客で賑わっていた。
「シン凄いよ!こんなに桜咲いてる――!」
きゃっきゃっと喜んで動き回っている優姫の姿に、隊士達はほんわか~と癒されているのだった。
「いつも仕事で男ばっかりでむさ苦しいけどさ――。優姫ちゃんの姿見ると癒されるよねェ……」
「あ――あんなに喜んで走り回っちゃってて可愛いなァ……」
「「「「 本当に優姫ちゃんは可愛いなァ 」」」」
じーんと優姫の姿に癒されている隊士達を横目に十四郎は言った。
「そう言えば近藤さんの姿が見えないけど何処に行ったんだ?」
「さっきまで一緒にいたんですけどねェ。忽然と姿を消しましたさァ」
さらっと答えた総悟に十四郎は呆れかえってしまう。嫌な予感しかしなくて。
「オイ優姫、勝手に動いてると迷子になるぞ」
十四郎に呼ばれ、ぴたっと立ち止まると優姫はたたっと走り戻ってきて、十四郎に抱きついて言った。
「お花見すご――い !! 」
「お――そうか良かったな」
ぐしぐしっと頭を撫でてやると優姫は嬉しそうに微笑んだ。
「そう言えば近藤にーちゃんは ? 」
総悟と十四郎と手を繋ぎながら優姫は尋ねてきた。
頭の上に乗っているシンも近藤の事を探してきょろきょろしているのだが、何処にもいないと言っているかのようにキュー、と小さく鳴く。
「先に場所取りした場所に行ったのかしれませんぜィ」
「近藤さんは子供じゃねーんだし一人でいたって大丈夫だろう」
「何レギュラーみたいな顔して座ってんだゴリラァァ!どっからわいて出た !! 」
すると近くから聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえ、其処を見ると妙に殴られまくっている近藤がいるのだった。
「あ、近藤にーちゃんいたー!」
妙にこてんぱんに殴られている近藤を見て、嫌な予感が的中したと十四郎はこれ以上ない位溜息を付きながら其処へ向かった。
「オイオイまだストーカー被害に遭ってたのか。町奉行に相談した方がいいって」
「いやあの人が警察らしーんスよ」
「世も末だな」
呆れかえる銀時と新八に向かって十四郎は言った。
「悪かったな」
銀時が振り返ると其処には真選組が勢揃いしていて嫌そうな表情で言う。
「オウオウムサい連中がぞろぞろと。何の用ですか?キノコ狩りですか?」
「そこをどけ。そこは毎年真選組が花見をする際に使う特別席だ」
すると銀時はこれ以上ない位めんどくさそうに言ってきた。
「どーゆー言いがかりだ?こんなもんどこでも同じだろーが。チンピラ警察二十四時かてめーら!」
「同じじゃねぇ、そこから見える桜は格別なんだよ、なァみんな?」
そう十四郎が尋ねると皆が口々に答える。
「別に俺達ゃ酒飲めればどこでもいいッスわ~~」
「アスファルトの上だろーとどこだろーと構いませんぜ。酒の為ならアスファルトに咲く花のよーになれますぜ!」
その返答に十四郎も本当は何処でも良いと叫ぶ中、へにゃっと優姫が言った。
「ここ桜がたくさん見えて綺麗だねー」
すると一転、隊士達が口々に叫び出すのだった。
「ここから見られる桜が一番に決まってるだろうがァ !! 」
「そうそう、ここ一番良い !! 」
「酒よりも場所場所 !! 」
優姫の一言でさらっと意見を変えた隊士達に、十四郎は怒りを隠せなかった。今にでも全員介錯してやりたい衝動に襲われる。
「坂田にーちゃん!」
優姫は今の状況を全く理解していなかったらしく、嬉しそうに銀時に飛びついていた。
「おー優姫、銀さん優姫の為に最高の場所取っておいたから」
「えへへ、有り難うー」
へにゃっと笑う優姫を見て十四郎は声を上げるのだった。
「大体山崎に場所取り行かせた筈だろう、何処行ったアイツ !! 」
すると少し離れた場所で必死にバトミントンのラケットで素振りをしている山崎がいた。
「山崎ィィィィィ !! 」
「ギャァァァァァ !!」
素早く山崎を殴りに十四郎が走り山崎の悲鳴と殴る音が響くのだった。
◆
「まァとにかくそーゆう事なんだ。こちらも毎年恒例の行事なんでおいそれと変更は出来ん。優姫ちゃん人一倍楽しみにしてたし」
鼻血を流しながら近藤は真顔で言い足した。
「お妙さんだけ残して去ってもらおーか」
「いやお妙さんごと去ってもらおーか」
素早くツッコミを入れた十四郎に近藤は素早く言い返す。
「いやお妙さんは駄目だってば」
「何勝手ぬかしてんだ。幕臣だがなんだかしらねーがなァ」
銀時達も立ち上がり次々と言うのだった。
「俺達をどかしてーならブルドーザーでも持ってこいよ」
「ハーゲンダッツ一ダース持ってこいよ」
「フライドチキンの皮持ってこいよ」
「フシュー」
案外簡単に動きそうなメンバーに、唯一真面目な新八が簡単に動くじゃないかと素早くツッコミを入れていた。が、そのままスルーで話は進んでいる。
「面白ェ幕府に逆らうか?今年は桜じゃなく血の舞う花見になりそうだな……」
十四郎がそう良いながら刀に手を伸ばした瞬間、優姫の黄色い声が響いた。
「可愛い―― !! 」
優姫は神楽の隣に座っていた巨大な犬に抱きついていた。
「この子可愛い!大きい!ふかふか―― !! 」
「定春言うアルね!万事屋のペットアル」
神楽にそう説明されて優姫は定春と握手しながら言う。
「定春こんにちは――、私は優姫って言うんだよ。あ、この子はシンね」
頭の上に乗っているシンの自己紹介をすると、くるっと振り返った優姫が笑顔で言うのだった。
「今日のお花見は真選組と万事屋一緒にやるんだね」
同じ場所だから、と言い加えた優姫に十四郎は気が抜けた。
「お前今まで話聞いてたのかよ……」
「じゃあメンバー揃った事ですしここは花見らしくひとつ決着つけましょーや」
優姫の肩に手を置いて総悟が得意そうに叫ぶ。
「第一回陣地争奪……叩いてかぶってジャンケンポン大会ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ !! 」
「「「「 花見関係ねーじゃん !! 」」」」
総悟に対し皆が激しく突っ込む中優姫一人嬉しそうに言っていたのだった。
「わ――今からみんなで遊ぶんだね」
◆