疎との鳥 籠の禽
問題11 お花見ワッショイ
「いけェェ局長ォ !! 」
「死ねェ副長 !! 」
「誰だ今死ねっつったの !! 切腹だコラァ !! 」
陣地争奪戦の被って叩いてジャンケンポン大会の準備が行われ、真選組からは近藤、十四郎、総悟が。万事屋からは銀時、妙、神楽が出場するのだった。
「きゃー定春~~!」
一人陣地争奪戦をしている事を分かっていない優姫は、定春の背中に乗せてもらって楽しそうにしている。
「えー勝敗は両陣営代表三人による勝負で決まります。審判も公平を期して両陣営から新八君と俺山崎が勤めさせてもらいます」
山崎と新八が審判となり説明をしていた。
「勝った方はここで花見をする権利+お妙さんを得る訳です」
さらっと説明し終わった山崎に対し新八が素早くツッコミを入れた。
「何その勝手なルール !! あんたら山賊 !? それじゃあ僕ら勝ってもプラマイゼロでしょーが!」
すると山崎は懐からソーセージを取り出して真顔で言う。
「じゃあ君らは+真選組ソーセージだ!屯所の冷蔵庫に入ってた」
「要するにただのソーセージじゃねーか !! いるかァァァァ !! 」
怒って言う新八と山崎に向かって銀時が言うのだった。
「んじゃあ俺等が勝った場合は場所+真選組ソーセージと優姫な」
「アンタも負けず劣らず山賊してるな !! 」
勝ったら手に入るモノがソーセージと優姫となって神楽はやる気満々で言っていた。
「私頑張るアル。優姫もソーセージも私達のモノネ」
「馬鹿かー !! お前等馬鹿か――― !! 」
気張って怒鳴る新八を無視し、一線目の近藤対妙が始った。
「キュー」
試合が始まるとのほぼ同時にシンが鳴き、定春の背中から降りると優姫は言った。
「そうだね、お弁当食べよう」
優姫は観戦している隊士達に向かって笑顔で言うのだった。
「シンがお腹空いたって言うから勝負見ながらご飯にしようね」
ごそごそと持ってきた重箱を広げながら優姫は笑顔でいた。
「あ――美味い美味い。やっぱりお菊さん達は料理が上手だな」
「お、この和菓子いつもと違わねェか?」
「ホントホント、美味いなこの和菓子」
勝負をほっておき勝手にお弁当を食べ出しだした隊士達に向かって優姫は笑顔で答えた。
「それ私が作ったの――」
「マジで―― !? 」
「優姫ちゃん料理上手だなァ」
「お家が和菓子屋さんだからある程度の和菓子なら作れるの――」
すぐ隣で殺気を放っている妙が居る中、優姫の周りだけのほほんとした空気が漂っているのだった。
「局長ォォォォォォォ !! 」
轟音と共に近藤の事を叫び呼ぶ声がし、見てみると近藤が妙に負けたらしくぐったりと倒れていた。
「てめェ何しやがんだクソ女ァァ !! 」
隊士達が妙に対して暴言を吐くと血走らせた目で妙が答えた。
「あ゛~~~~~~~やんのかコラ」
「「「「「「「「「「 すんませんでした !! 」」」」」」」」」」
全員が土下座しているのを見て、優姫は改めて妙が凄い人物なんだと言う事を確認していた。
「えーと局長が戦闘不能になったので、一戦目は無効試合とさせていただきます」
ずるずると気を失っている近藤が引きずられている様子を見ながら山崎が言っていた。
「二戦目の人は最低限のルールは守ってください……」
「 !! 」
すると既に二戦目の総悟対神楽は始まっていて、目にも止まらぬスピードで殴り守りの攻防を続けていて皆声を張り上げている。
そんな中のんびりと数名お弁当を食べている事に気が付き新八が突っ込んできた。
「ちょっとなんでそこ普通に花見楽しんじゃってるの !? 陣地争奪戦無意味 !? 」
ずずーっとお茶を飲んだ優姫はにこっと声を掛けるのだった。
「新八にーちゃんもお弁当食べる?」
「あ、うん」
優姫の誘いを断る訳にはいかないと思い、新八は控えめに頷いた。
「ホゥ総悟と互角にやりあうたァ何者だあの娘。奴ァ頭は空だが、腕は真選組でも最強とうたわれる男だぜ……」
「互角だァ?ウチの神楽にヒトが勝てると思ってんの?奴はなァ絶滅寸前の戦闘種族“夜兎”なんだぜ。スゴイんだぜ~~」
「なんだと、ウチの総悟なんかなァ……」
勝手に言い合いを始めた十四郎と銀時に、新八がこれ以上増やすんじゃないと思いながら必死になってツッコミを入れる。
「オイッダサいから止めて!俺の父ちゃんパイロットって言ってる子供なみにダサいよ !! 」
「あ、私おトイレ行ってきますー」
すくっと立ち上がると優姫はトイレへ行ってしまった。
「っていうかアンタ等何 !? 飲んでんの !? 」
いつの間にか飲み比べを始めている十四郎と銀時に呆れていると、総悟対神楽の方が凄まじい事になっていた。
しかしよくよく見るとメットは被ったままだしジャンケンなど全くしていなく、ただの殴り合いになっている。
「ただの殴り合いじゃねーか !!だからルール守れって言ってんだろうがァァァ !! 」
もう全然ルールのルの字もなく残りの二人の対決で勝負を決めるしかないと新八は振り返えった。
するとさっきからずっと飲み比べをし続けていた二人が思いっきり吐いているのだった。
「オイぃぃぃ !! 何やってんだ!このままじゃ勝負つかねーよ !! 」
新八の怒鳴り声にふらふらとよろめきながら銀時が答えてきた。
「心配すんじゃねーよ。俺ァまだまだやれる。シロクロはっきりつけよーじゃねーか。このまま普通にやってもつまらねー。ここはどーだ、真剣で“斬ってかわしてジャンケンポン”にしねーか !? 」
完全に酔っぱらっている銀時の提案にふらふらで立ち上がった十四郎は上等だ、と答えて勝手に勝負内容が変わった。
「スッキリしたね――」
するとトイレから戻ってきた優姫とシンが笑顔で歩いてきた。
「いくぜ!」
「ふぇ?」
銀時の叫び声に反応した優姫は真剣を持ってふらふらしている十四郎と銀時を見て慌てて走った。
「「 斬ってかわして !! 」」
ジャンケンをしようと二人が手を動かした瞬間……。
「こら―――――――――― !!」
十四郎と銀時の中に優姫が割って入った。突然の優姫の登場に皆びっくりして止まった。
「優姫どけェ!」
「此処は男同士の真剣な戦い……」
「駄目でしょ刀なんか出したら !! 」
ぴしゃんと雷を落とした優姫に十四郎と銀時は素早く正座をした。
「二人ともお酒臭い!お酒は飲んでも飲まれるなって言うでしょ!駄目でしょそんなに飲んだら !! 」
「だってよォ~」
愚痴を言う銀時に向かって優姫はプンプン怒るのだった。
「だってじゃないでしょ!早くお水飲んで !! 」
完全に優姫に尻に敷かれている二人を見て、どう見ても一番最強なのは優姫だと皆確信した。
「お花見に来たんだからみんな仲良くしなきゃ駄目」
正座している二人の前にしゃがみ込んで優姫はそう言うのだった。
「あ~~~~」
銀時はガリガリと頭を掻くとべろんと前屈みになって優姫に抱きついて言う。
「銀さんお腹空いた~~何か食いてェなァ」
「お弁当食べる?いっぱい持って来たんだよ?」
「銀さん優姫が食べたい~~」
ぐたぐだと言う銀時の酒臭い息に優姫はへにゃっと笑って言う。
「坂田にーちゃんお酒臭い~」
「いつまで馴れ馴れしく触ってやがるんだ」
ひょいっと優姫の事を抱き上げて、十四郎は銀時を睨み付けた。
「優姫に手ェだそうなんか十億年早ェんだよ」
「アーン?お兄さんは引っ込んでやがれ」
優姫を取り上げられたのが非常に気に入らなかったらしく、銀時は噛みつくように十四郎に言い出した。
「誰がお兄さんだ。俺はもう優姫とあーんな事もこーんな事もしてるんだよ」
「な、なんだとォォォォォ !!!!」
ギリリと悔しそうに言った銀時に、山崎が離れた位置からきっぱりはっきり言ってやる。
「何もしてませんよ」
「二人とも喧嘩は駄目だってば――」
完全にいつものへにゃっとした優姫に戻っていて、ぎゃーぎゃーと優姫の取り合いをしている二人を見て山崎は無表情で新八に言った。
「お互い妙な上司がいて大変ですね。一緒に飲みましょーか、愚痴を肴にして」
「そーですね」
こうして騒がしい第一回陣地争奪戦は幕を閉じるのだった。
◆
「えへへーお花見って楽しいね」
陣地は両方で仲良く使う、でまとまり真選組が持ってきたお弁当を皆で食べながら話をしていると、優姫が本当に嬉しそうに言った。
「また来年もみんなと一緒にお花見したいな――」
十四郎を背中に、銀時の頭を膝の上に乗せた状態で言う優姫に妙はにっこりと微笑んで言う。
「そうね、また来年も一緒に花見したいわね」
「うん!」
「来年は局長とか気絶しないで済むようにちゃんと予定組みましょうね」
「銀さんもただの酔っぱらいのセクハラですしね」
ぐーぐーと気持ちよさそうに眠っている銀時を見て新八は呆れている。
「まあこっちも副長駄目駄目ですけれどね」
苦笑いで優姫の背中に乗って寝ている十四郎を山崎は見て言った。
「でも楽しいから良いの。来年が楽しみだな――」
たくさん桜の花びらが舞う中、みんなで楽しく来年の花見の約束をするのだった。
(2006,10,9 飛原櫻)