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問題12 ご自慢ペット対決

 

 

「シン、今日はこっちにお散歩行こう」

 かぶき町を優姫はシンと二人で仲良く走っていた。


 優姫の日課のシンの散歩。


「今日はこのまま万事屋にでも遊びに行く~?」

 パタパタと抜け道を走りながら万事屋の方へ走っていた。

「あ、行きにお団子でも買ってく?シンお団子大好きだし」

 にこにことシンに話しかけていると、大通りを歩いていた人にぼすっとぶつかってしまった。

「わっ……ごめんなさ……」

 鼻頭を擦りながら優姫は顔を上げて目の前に飛び込んできた人物に目を輝かせた。

「………でっかい」

 



江戸のトラブル娘
問題12   ご自慢ペット対決

 



「優姫殿ではないか」

 その人物の背後からひょっこりと顔を出した桂に、優姫は顔を輝かせて言う。

「桂にーちゃんだ」

 嬉しそうな表情で言う優姫に桂は尋ねた。

「優姫殿は今から銀時の所にでも行くのか?」
「うん、シンのお散歩しながら」

 にっこにこと答えた優姫に桂は不思議そうに首を傾げた。

「シン?」

 優姫は足下にいるシンを抱き上げると言う。

「もふもふのシンなの――。可愛いでしょ」
「宇宙生物の一種の様だな……」

 マジマジとシンの事を見て言う中、優姫の事をじーっと見てくるソレに桂に尋ねた。

「桂にーちゃん、桂にーちゃん」
「ん?どうかしたか?」

 羽織の裾を引っ張ってくる優姫の言いたい事を理解し、桂は答えた。

「エリザベスだ」

 桂にエリザベス、と呼ばれたその生き物は無言ですっと優姫に向かって手を差し出してきた。

「エリザベス?」

 じーっと見上げているとエリザベスに頭をぐりぐりと撫でらた。すると警戒心が解けたのか優姫は嬉しそうな表情でエリザベスに抱きつくいて言う。

「でっかい……」

 ぎゅーっとエリザベスに抱きついている優姫に桂は言った。

「今から河川敷へ行く予定だが一緒について来るか?銀時の所へ行くのなら無理強いはしないが」
「エリザベスと遊びたい!」

 目を輝かせて言う優姫に桂はにっこりと微笑むのだった。





「第一回宇宙で変てこペットグランプリ?」

 楽しそうにエリザベスと遊んでいた優姫は不思議そうに尋ねる。

「地球外生物をペットにしている飼い主に自分のペットを自慢してみませんか?みたいな番組が今度あるらしくな、優姫殿も出る事が出来るのではないかと思ってな」

 桂に説明され、優姫は本当に不思議そうな表情をしてから言う。

「私が出られる?」
「シンがいるだろう」

そう言われ、優姫は足共にいるシンを見て答えた。

「ふぇ?シンって宇宙人だったの?」
「宇宙外生物だな」

 ずっとシンの事を犬だと思っていた優姫は抱き上げるとにこにこと言っていた。

「シンすごーい。宇宙から来たんだ」
「取りあえず出て損は無いと思うからどうだ? 豪華賞品も出るらしい」
「ごーかしょうひん?ん――――」

 特に商品に興味の無い優姫は腕を組んで考え込むのだった。





「最後はなんと『あの』真選組屯所から愛らしいペットのシンくんと、またそれに劣らない位愛らしい飼い主の近藤優姫ちゃんです」

 司会者に紹介され、優姫は頭にシンを乗せたまま笑顔で会場に出た。

「あ、銀にーちゃん」

 先に出場していた坂田さんファミリーこと銀時達を見て、優姫は笑顔で手を振った。

「この頭に乗っかってるのがシンくんだね――。いやー前の二組のペット見た後だもんで余計に愛らしく見えるねー」

 定春とエリザベスを見てからどさくさに紛れて司会者はそんな言葉を発していた。

「シンはね、もふもふしてて大人しくて可愛いの――」

 へにゃっと答えた優姫に司会者はついつい頬を赤くしながら言い出す。

「いやいや優姫ちゃんも可愛いねー」
「何どさくさに紛れて言ってるんですか !! 」

 すかさず新八のツッコミが入り、司会者は咳払いをしてから言う。

「それじゃあアピールタイム終えて対決にうつらせてもらいますよ」

 司会者は骨を取り出して説明を続けるのだった。

「私の投げたフライドチキンの骨を先にくわえ持ち帰った方が勝ち。飼い主の誘導もけっこーですよ」
「シン、あれ投げたら取って来てね」

 にこっと微笑んで説明した優姫にシンは大きく鳴いた。
 ステージから移動し、定春、エリザベス、シンが一列に並び司会者が大きな声で言った。

「それじゃあいきますよォオ。位置についてェェよ~~い、ど~~~~ん !! 」

 司会者が声と同時に骨を思いっきり遠くへ投げ飛ばし、定春とエリザベスが同時にばっと走り出すのだった。

「ああ――っとこれはっ…… !! 」

 司会者の叫ぶ先で銀時が定春に噛みつかれていた。
 それを見てから優姫は何事も無かったかの様に、まだ走りだしていないシンに向かって声を掛ける。

「シン行ってきて――」
「キュー」

 優姫からの合図を受け、シンは素早く骨に向かって走り出した。
 その間も銀時は定春に攻撃されているし、エリザベスが豪速球で走っていて、何度かちらっとオッサンの様な足が見えていたりてんわやんわだ。
 完全に負けそうである定春に新八が慌てていると、緊張からやっと落ちついた神楽が傘を使って銀時を投げ飛ばすのだった。
 すると定春は噛みつかんと言わんばかりに銀時に向かって大爆走する。

「これは坂田さん、定春くんが自分に食らいついてくるのを利用してエサになった!」

 やっと試合らしい試合になって司会者は声を上げて実況した。

「猛然と駆ける定春くん !! しかしエリザベスちゃん!既に骨に手を……」
「あれ?シンが何処にも居なく無い……?」

 シンの姿が何処にもいない事に気がついた新八が声を漏らしていると、木刀を使ってエリザベスを銀時が押さえつけていた。

「豪華賞品は渡さん」

 にぃっと笑って言う銀時の首を、後を追ってきた桂が銀時の首を締め付けながら必死に言っている。

「エリザベスを離せェェェ !! 豪華賞品は俺とエリザベスのも……」
「あ」

 そんな事を言っていると桂の頭を噛みつきもう勝負はグダグダなのだった。

「てめーらよォ !! 競技変わってんじゃねーか !! 頼むから普通にやってくれェ !! 放送できねーよコレ」

 司会者が青筋を立てて怒っていると突如低いオッサンの声が聞こえるのだった。

「あ――――もういいっスわ~~なんかだるい」

 するとエリザベスの口の部分から人の手がゴソゴソと出てきて皆唖然とするのだった。

「もう帰るんでちょっと上どけてもらえますぅ?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛コレは……」
「嘘だろ……エリザベ……」

 ここで放送が止められて皆が驚き慌てふためいている中、優姫の所へひょいっと戻って来たシンの口にはしっかりと骨がくわえられているのだった。

「えへへ、シンの勝ち―――」

 優姫は嬉しそうにそう言った。


「どうやら話によれば優姫殿とシンが優勝したらしく豪華賞品を持ち帰ったらしい」

 万事屋にやってきた桂は新八の出されたお茶を飲みながらそう説明していた。

「へ――さすが優姫って感じだな」

 ジャンプを読みながら適当に返事をした銀時は思い出した様に言う。

「そー言えばお前ん所の気持ち悪ィのはどーなったんだよ」
「気持ち悪ィじゃないエリザベスだ」
「中身がアレだったしもういなくなって………」

 銀時がそう笑いながら言うとガララとドアが開いて目を見開いた。其処には何事も無かったの如くエリザベスが立っているのだから。

「何で普通に居るのォォォォォォォ !? 」

 叫ぶ銀時に桂は当たり前の表情で答えた。勿論何時もと変わらぬ真顔で、だ。

「いて当たり前だろう。エリザベスは俺のペットだからな」
「いや何得意げな顔してんのお前? 殴りてェし」
「こんにちはー」
「へ?」

 ふんわりとした声が聞こえ振り向くと、エリザベスの後ろからひょこっと優姫が出てきたのだった。

「優姫―――― !? 」

 驚く銀時を無視し、桂は優姫の頭を撫でながら言った。

「買い物はもう済んだのか?」
「うん、エリザベスがねお菓子たくさん買ってくれたのー」

 にこにこと答える優姫の持つ袋の中には大量の駄菓子が入っていた。

「なんで仲良くなってるの……?」

 銀時は疲れ切った表情でそう呟くのだった。
(2006,11,20 飛原櫻)

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