top of page

問題14 おっきくもふもふ

 

 

「………………ふえ?」

 朝起きた優姫は自分の枕元を見て一瞬固まった。

「…………えと……」

 少し考え込んでから優姫は再び枕元を見た。

「…………ぐー」
「わァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ !! 」

 次の瞬間優姫は大声を上げるのだった。

 



江戸のトラブル娘
第14話   おっきくもふもふ

 



「優姫どうしたァァァァァ !? 」

 バン!と外れる勢いで襖を開けた十四郎も目の前の飛び込んで来た光景に目を点にしてしまう。

「優姫ちゅあん!どうし……」

 悲鳴を聞きつけて飛んできた近藤も飛び込んできた光景に固まった。

「えと……シン?」

 おそるおそる手を差し伸べてみるとパチッと目を覚ました『ソレ』、は勢いよく優姫に飛びつくのだった。

「わぁ !! 」
「キュー」
「「 やっぱりそれアレなのかァァァァァァァ !? 」」

 近藤と十四郎が同時に悲鳴を上げるとひょっこりと顔を覗かせた総悟が言った。

「誰ですかィ?優姫に抱きついてるそのスッポン男は」





「はァ?大串君アンタ馬鹿ですかァ?」
「誰が大串だ !! 」

 屯所縁側を歩く銀時に馬鹿にされ十四郎は大声を張り上げていた。

「いきなり『有無言わず屯所に出頭してこい』なんて言う伝達寄こすから、やっと優姫くれるかと思ったのによォ」
「斬られてェのかテメェは !! 」

 先程からぎゃーぎゃーと騒ぐ二人の後ろにいる新八と神楽は、呆れ顔でその光景を見ていた。

「でも本当にどうかしたのですか?銀さんにそんなモノ持ってこさせて」

 新八が十四郎に尋ねる中、神楽は銀時が持っている着物に目線を移しつつ言う。

「お前銀ちゃんのコスプレでもするアルか?」
「誰がするかっ !! 」

 全力で否定しつつ、十四郎は答える。

「着るのは俺じゃねェ、シンだ」
「だから馬鹿ですか、アンタ?」
「状況見てから文句を言えェェェェェ !! 」

 青筋を立てて怒る十四郎を見つつ居間にやってくると襖を開けて総悟が顔を出し言った。

「やっと来たですかィ」
「何で俺が向かえに行かなきゃいけねェんだ」

 気に入らないと言わんばかりの十四郎を無視し、総悟は銀時に言った。

「旦那わざわざ悪いですねィ」
「まあ優姫の頼みなら仕方ねェけどな」
「オイ無視か !? 無視なのか !? 」

 十四郎が怒る中、部屋の中を見た新八と神楽が目を見開いて固まっているのだった。そんな二人に気が付いた銀時がその様子を笑いながら部屋を見て、同じ様に固まる。

「シン大きくなったね――」

 中では金髪の少年の頭を笑顔で撫でている優姫と、その光景を不安そうに見守る近藤がいた。その少年は黒シャツ一枚とトランクスを履いていて、頭から立派な耳が生えているのだった。
 固まっている万事屋メンバーが着た事に気付いた優姫は笑顔で顔をあげて言う。

「あ、みんな来た――」

 へにゃっと笑う優姫にばふっと少年が飛びついた瞬間、銀時は持ってきた着物をばさっと床に落として叫んだ。

「んなァァァァァァァ !? 」
「だから言ったじゃねェか」





「おかしな事もあるんですねぇ……」

 用意されたお茶を一口飲んでから新八は改めて今の状況を見て言う。

「一体何が遭ったんですか?動物が人間になっちゃうなんて」

 少年ことシンの姿を見て尋ねると腕を組んで近藤は言う。

「それがさっぱりでねェ……朝優姫ちゃんの大声聞こえて駆けつけたら既にあの状態でなァ……」
「取りあえず裸でいさせる訳にもいかねェ。隊服を着せてみた所嫌だと暴れて始末がつかねェ」
「で、旦那の格好ならいけるんじゃないかと言う事で呼んだのですさァ」

 十四郎と総悟が続けて言うと、銀時ははっきりと言い返した。

「テメェ等の着物着せれば良いじゃねーかよ」
「「 破かれたら困る 」」

 声を合わせて言った二人に銀時は怒鳴り散らす。

「俺の着物は破かれても良いって言うんかコノヤロー !!!! 」
「良いに決まってるから持って来させたに決まってるだろうが」

 はっきりと言い切った十四郎に青筋を立てていれば、側に寄って着た優姫がにぱっと笑って言った。

「銀にーちゃんとシンおそろいー」
「俺は出来る事なら優姫と揃いになりてェよ」

 ひしっと優姫の事を抱きしめた銀時に十四郎が怒ろうとしたのだがそれよりも早く、シンがガバッと飛びついた為、銀時はシンのタックルを顔面に受け鼻頭を押さえ悶えた。

「シン着物着ようね」

 その光景がもはや見慣れてしまっているらしく、全く気に止めずに銀時の着物を嬉しそうにシンに着せていた。

 しかし着物を着せられた途端、嫌だと言わんばかりに暴れるシンに優姫はめっ!、と言いシンはしゅんとおとなしくなるのだった。

「やっぱりシンアルね。優姫の言う事おとなしく聞いてるアル」
「取りあえずこのままだと困りますよね。どうするんですか?」

 新八が尋ねる隣でぼふっと優姫に抱きついているシンを見て銀時はギリギリと拳を握りしめながら呟く。

「シンと分かっていても怒りがこみ上げてくるぜ……」
「まあ男の子ですからね」

 普通に言った新八は優姫とシンの様子を見て、他と比べ普通な表情でいる総悟の事を不思議に思い尋ねてみる。

「沖田さんは全然慌てたりしないんですね。まあ相手は人になっているとは言えシンですからね」
「銀ちゃんは大人げないアル」

 ぴったりくっついて離れないシンを相手に、格闘する銀時の姿を見て呆れ言う神楽に総悟はさらっと言った。

「まァ原因俺ですからさァ」
「「「「「 は? 」」」」」

 びたっと全員の視線が集まるとへらっと総悟は言う。

「いや実を言いますとさァ、土方さん撃退用に作った薬が綺麗さっぱり無くなっててさ」
「俺撃退用って何やってるんだお前はァァァァァァ !!!!!! 」

 ガタッと勢いよく立ち上がり怒鳴る十四郎を見つつ総悟は話を続ける。

「良い薬品手に入ったからそれ使って土方さんを亡き者にしようと企んだんですがさァ、うっかり離れてる間にシンに飲まれちまったみたいですさァ」
「総悟ォォォォォォォ !! 」

 怒鳴り散らす十四郎を横におき、新八は納得した表情でシンを見た。

「なるほど。アレ薬が原因だったのですね。でもなんの薬作ったんですか?」
「犬になる薬」

 即答してから総悟は言い加える。

←サイトTOPへ飛びます

​作品閲覧中の誤クリックご注意下さい

動作/画面サイズ確認確認環境 Windows10/iPhone12

2022/4~ (C)飛原櫻

bottom of page