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問題14 おっきくもふもふ

 

 

「まあ正体不明の動物ですけど、シン犬科の動物だったみたいで犬が犬になる訳にもいかずに、人間になってしまったんだと思いますさァ」
「シン――、つまみ食いしたら駄目だって何度も言ってるでしょうー?」
「で、元に戻るのか?」

 銀時が尋ねてみると総悟ははっきりと頷き言う。

「まあ試作段階でしたし多分一日で効力は切れると思われますさァ」
「元に戻っちゃうだって。残念だねー」

 よしよしと頭を撫でる優姫を見守りながら落ちついた十四郎は座り直して言う。

「テメーはいつもんな事してるのか」
「まあ暇つぶしに」

「テメェは暇つぶしに人を殺すのかァァァァァァ !? 」

 再びガタッと立ち膝になった十四郎を近藤は慌てて宥め言う。

「まァまァ、取りあえず問題は解決するんだから落ち着けって」
「……近藤さん」

 近藤に言われてしまい十四郎は舌打ちしながら座る。

「ま、まあとにかく今日一日大人しくしていれば問題解決ですよね?」

 急いで話題を出す新八を横にし、当たり前の表情でシンを連れて外へ優姫が歩いて行くのだった。

「ちょっと待てェェェェェ !! 」

 素早く優姫の肩を掴んで十四郎は言う。

「何処に行くつもりだァァァ!つーか頼むから話聞いてろ !! 」
「えー、お散歩だよ」
「おとなしくしてろって話してたばっかりだろうがァァァァァァ !! 」

 今の状態のシンを堂々と外に連れていこうとしていた優姫に、十四郎はこれ以上ない位に怒鳴るのだった。
 今のシンが何をするか分からない。普段の動物の姿なら問題は無いが人の姿をしているのでは問題大ありだ。


 絶対に優姫を外に出してはいけない。


 そう瞬時に全員が悟って慌てて口々に言う。

「優姫今日の散歩はお休みだ!万事屋と一緒に茶菓子食おう !! 」
「一日くらい散歩休んでも大丈夫だから取りあえず今日は止めておきましょう!」
「優姫今日はこれから雨ですさァ。びしょ濡れになって風邪でもひいたら一大事になるから、今日の散歩は休んで土方さんからかいましょうぜィ」
「総悟お前何どさくさに紛れて言ってるんだァァァ !! 」
「優姫ちゃんっ散歩に行きたい気持ちは分かるけど今日だけは我慢してねっ !! 」
「一緒に定春と遊ぶアルね!」

 慌てふためくみんなの様子を見、優姫は残念そうにシンに話しかけた。

「今日はお散歩駄目だってー。残念だねェ」
「キュー」
「元気出してね」

 よしよしっと頭を撫でている優姫の姿を見て、皆安堵するのだった。





「全くお前コレに懲りたら二度と馬鹿げた事するんじゃねェぞ」

 一段落付き十四郎は総悟の事を思いっきり睨み付けながら言った。その視線に全く怯える事なく総悟はぼそっと呟くのだった。

「……あの薬改良したら耳とか尻尾だけ生える出来るかなァ……」
「テメェは人の話聞いてるのか?アァ ?? 」

 青筋を立てて襟首を掴む十四郎に向かって総悟は真顔で尋ねる。

「土方さんも見てみたいと思いやせんか?耳と尻尾の生えた優姫の姿を」
「………………」

 一瞬半獣化した優姫の事を想像し、黙ってしまうと総悟はさらっと言い切る。

「きっと優姫だったら似合いますぜィ。襲いたくなる位に」
「総悟ォォォォォォォォォォ !!!!!!!! 」

 刀を振り回して庭へ飛び出して行く十四郎と、それから逃げる総悟の姿をシンは眠そうな表情で見るのだった。





「あ、元に戻った――」

 日が傾き始めた頃、元の姿に戻ったシンを見て優姫は言っていた。座布団の上で気持ちよくヨダレを垂らして寝ているシンの姿は間違いなくもふもふの動物の姿だ。

「これで一段落だな」

 ひょこっと顔を覗かせて言う銀時を見つつ優姫は残念そうに呟いた。

「あーあ、元に戻っちゃったね――」

 ぐしぐしと頭を撫でているとパチッと目を覚ましたシンがぴょんといつもの場所に飛びついた。

「やっぱりシンはその姿で其処にいるのが一番似合いますね」

 にこっと微笑んで言う新八の目には優姫の頭の上に飛び乗り、満足げな表情で尻尾を振っているシンがいるのだった。

「シンお帰り――」

 優姫の声にシンは嬉しそうに一声鳴いた。

「キュー」





 数日後……。

「エェェェェェェェェェ !? 」

 たまたま縁側を歩いていた十四郎は優姫の姿を見るなり大声を上げた。

「土方にーちゃんどーしたの?」
「おまっ……その耳っ !? 」

 わなわなと震えつつ優姫の頭を指さし、理解したのか笑顔で返答された。

「耳?あ、えっとね」

 ぽこっと頭に生えていた耳を取ると笑顔で優姫は言う。

「猫耳カチューシャ総悟に貰ったの――。ねーシン」

 足元にいたシンに言うとキュー、と鳴いた。

「シンとお揃いなんだよ――。……土方にーちゃん?」

 様子のおかしい十四郎の事を見ていると、角からやってきた総悟を見るなり刀を抜いて怒鳴った。

「総悟テメェは紛らわしい事してるんじゃねェェェェェェェ !!!! 」
「やっべ、バレたか」

 足早に逃げて行く総悟の事を十四郎はマッハで追いかけて行き、その場に取り残された優姫は不思議そうに首を傾げるのだった。

「変なの。あ、お散歩行こうかシン」
「キュー」
(2007,2,14 飛原櫻)

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