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問題3
コレステロールって気にしないの?

 

 

「えっと……えっと…………」

 優姫はきょろきょろと辺りを見回して首を傾げた。

「んと…………真選組屯所って何処?」

 優姫は迷子になっている様だった。

 



江戸のトラブル娘
問題3 コレステロールって気にしないの?

 



 晋助に言われ真選組の情報を入手する為屯所へ向かったのだが、此処に来てから数時間の優姫に地理が解る筈がなく、どうしたモノかと首を傾げて今に至る。

「ん――確か窓から見た時は分かったのだけどなァ……取りあえず大きな建物探せばいいのかな?」

 優姫は特に深く考える事もなく、ぽんと手を叩いて言った。

「えっとえっと…………」

 きょろきょろと歩いていると前から歩いて来た人のお腹にぼすん、と当たり優姫は顔を押さえながら言う。

「わ…………すいませ……」
「大丈夫か?」

 顔を押さえている優姫に心配そうに声を掛けて来た相手に優姫は大きく頷く。

「また珍しい格好してるけど観光者か?」
「えっとえっと」

 優姫は顔を擦ってから見上げて言った。

「あのね私、真選組屯所に行きたいの」
「あ?屯所に?」
「うん」

 にっこりと答えると天然パーマの様な髪型をした青年は大きく欠伸をしてから言った。

「屯所なら次の角を右に曲がってその先の道路渡って今度は左だ」
「ありがとう」

 道を説明してもらって笑顔でお礼をすると青年はほのかに赤い顔をした。

(うわ…………なんか可愛い奴だな)

 青年が無意識に優姫の頭をぐしゃぐしゃと撫でて来たので、優姫はじーっと青年の事を見るのだった。


 銀色の髪の毛が寝癖なのか天パなのか分からないが、取りあえずぐしゃぐしゃとしている。
 目は……はっきり言って死んだ魚の目をしている。


 死んだ魚のような目が余程気になったのか、優姫がじ―っと見ていると青年は目線の高さを優姫に合わせて言う。

「ん、ど―かしたか?」

 両肩に手を置いてにこにこと話かけて来た青年を見つつ、優姫は本来の目的を思い出して言った。

「あ、屯所に行かないと。おにーちゃんまたね」

 へらっと微笑んだ少女を見て青年は顔を赤くしつつ大きく頷いて言った。

「おーおー、お兄ちゃんいつでも待ってるからすぐにでもいらっしゃい」
「うん。あ、道教えてくれたお礼にこれあげる」

 優姫は思い出した様にカバンからチュッパチャップスを一本取り出すと笑顔で渡した。

「これ美味しいんだよ」
「おーおー、大事に食うぜ」

 ぐしゃぐしゃっともう一度頭を撫でられ優姫は笑顔で手を振って青年と別れ屯所の方へと行くのだった。





「土方さーん、何か面白い事でもないですかィ」
「ねえよ」

 即答され、少年はつまらなさそうに言った。

「土方さんが爆発するか空から何か良いモンでも降って来たら楽しいすけどねェ」
「よーし、総悟。今すぐ斬ってやるから表出ろォォォォォォ !! 」

 殺気だった声が真選組屯所に響き渡るのだった。

「おっき――い」

 優姫はやっとの思いでたどり着いた真選組屯所を見上げて言った。
 瓦屋根の昔作りの建物だったのだが屯所と言われるだけはあり、とても大きく塀も高い。

「ど―やって中に入れてもらおうかな……」

 ん―っと当たりを見回すと丁度良い所に高い木を見つけ、優姫は笑顔で走るのだった。

「てめぇ今日こそたたき斬ってやらァ !! 」
「土方さん殺気立ちすぎ―。何仕事サボってるんすかィ?」
「いつも寝てばっかりいるてめぇにだけは言われたくねーよ !! 」
「瞳孔開いてェますぜィ」
「五月蠅ェェェェェェ !! 」
「?」

 やっとの高さまで登った所、屯所内より大きな怒り声が聞こえ優姫は不思議そうに見た。
 屯所の庭で二人の男性が追いかけっこをしている、刀を持ちながら。

「わ――恐い――」

 率直な感想を述べてから優姫はもう少し上まで登ってみようかなぁ、と思い追いかけっこを見守りながら登り続けている。

「もう土方さん大人げないですぜィ」

 そう言って総悟がバズーカーを出した瞬間大きな声が聞こえる。

「ちょ……お前ま…………」

 最後まで意見を聞かず、総悟は一発でかいのをお見舞いするのだった。

「総悟ォォォォォォォ !! 」

 砲撃を避けてすぐに怒鳴った所、上から小さな声が聞こえた。

「……わぁ」
「あぁ?」

 不機嫌な顔で上を見上げると総悟の攻撃は後ろの方にあった木に直撃したらしく、メキメキと大きな音を立てながらまっすぐこちらに向かってきているのだ。

「でえぇぇぇぇぇぇ !! 」

 急いで逃げようとした所、木と一緒に小さな人影を見て慌てて走る。

「グッバイ、土方さん。あの世でマヨネーズでも啜ってな」

 総悟がそう言うのと同時に木が倒れズドーン、と騒音が鳴り響いた。土煙が収まってきたのを確認すると総悟は何事も無かった様に言ってきた。

「土方さーん、生きていますかィ?」

 自分でやったにも関わらず、他人事の様に総悟が言うと怒鳴り声が聞こえた。

「総悟てめえェェェェェェ !! 人を殺す気か!」
「何言ってるんですかィ土方さん。俺が殺したいのは土方さんだけですぜィ」

 と、答えた所、総悟は目を丸くして見た。


 自分が殺そうとした相手の腕の中にすっぽりと、少女が収まっているのだ。


「は?」
「お前何かとすぐにブっぱなしやがって何やって……」
「お前等何やってるんだァァァァァ !!」

 怒鳴り声と同時にげんこつが二つ降ってきた。

「「 い゛っ !! 」」

 ゴン、と大きな音が響くのと同時に男性は言った。

「屯所壊すなこの野郎ゥゥゥゥ!」
「ふは――びっくりした」
「……は?」

 いきなり聞こえてきた愛らしい少女の声に男性は二発目のげんこつを落とそうとしていたのだが、ぴたっと止まった。

「急に木が倒れちゃうんだもん、びっくりー」

 優姫はふと顔を上げて言うのだった。

「あ、こんにちは」


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