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問題5
テロリストはヅラ

 

 

 今の爆音に大使館の中にいた戌威族がぶわっと出てきてそれを見た新八が声を張り上げる。

「ぬわぁぁぁぁ !! ワン公一杯来たァァ !! 」

 すると今まで大使館横に座っていた僧侶が素早く立ち上がり戌威族を踏み倒し、すたっと銀時達の前に降りて被っていた笠を取ると言った。

「逃げるぞ銀時」

 黒髪の長い髪の毛の男性を見るなり銀時は驚いた表情で言った。

「おま……ヅラ小太郎か !? 」

 すると素早く銀時にアッパーを食らわせながら男性は言った。

「ヅラじゃない桂だァァ !! 」
「ぶふォ !! 」

 ずさっと後ろに吹っ飛んでから銀時は素早く起きあがると怒鳴り言う。

「てっ……てめっ久しぶりに会ったのにアッパーカットはないんじゃないの !? 」
「そのニックネームで呼ぶのは止めろと何度も言ったはずだ !! 」

 いきなりの事態に新八も神楽も唖然と見ていたのだが、こちらに迫ってくる戌威族の事を思い出した桂は走り出しながら銀時に言うのだった。

「話は後だ。銀時行くぞ !! 」

 確かにこの状況でこのまま居たら捕まってしまう。銀時は舌打ちをしながらも急いで走り出した。

「あわわわ……」

 そんな銀時の視界に未だ状況を全く掴めていなく慌てふためく優姫の姿が飛び込み、急いで抱き上げた。

「銀さん !? 」

 その行動に新八が驚いたのだが、銀時の一言に納得するしかなかった。

「このまま置いて行ける訳ねェだろうがァァァァ !! 」
「あわわわわ」





「バッチリ映っちゃってますよ。ど―しよ姉上に殺される」
「テレビ出演。実家に電話しなきゃ」
「わ――テレビに映っちゃった――。おじーちゃんとおばーちゃんに見せたいな――」

 先程の事件はもうテレビに出ていて監視カメラにばっちりと優姫達の姿が映っていていた。
 とは言っても慌てているのは新八だけであり、優姫も神楽も嬉しそうにテレビを見ているのだった。

「何かの陰謀ですかねこりゃ。なんで僕らがこんな目に。唯一桂さんに会えたのが不幸中の幸いでしたよ」

 新八は桂によって案内され匿われた部屋を見て、後ろで横になる銀時に話しかけている。

「誰かビデオに撮ってないかな――。あ、近藤に―ちゃん達は見たかなァ?」
「お、優姫兄弟がいるアルか?」

「うん――。いっぱいいるの――」

 にこにこと神楽に話しかけていると銀時が話に割り込んで言った。

「優姫安心しろ。銀さんがいつでも兄ちゃんになってやる。むしろ生涯のパートナーになってやろう」
「……こんな状態の僕ら匿ってくれるなんて」
「しょうがいのぱ―とな―?」
「そうだ、生涯のパートナー」
「…………銀さんの知り合いなんですよね?一体どーゆー人なんですか?」
「だから銀さんと一緒に夜のかぶき町に……」
「人の話を聞けェェェェェェェ !! 」

 ぷちーんと切れて怒鳴りちらした新八に銀時はめんどくさそうに視線を動かして、一言だけはっきりと言った。

「ん――テロリスト」
「はィ !? 」

 新八が何を言っているんだと言う表情で銀時の事を見下ろしていると襖がスーっと開き、桂が入って言った。

「ロリコンに言われたくない」

 そう言ってから桂は話を続けた。

「この国を汚す害虫“天人”を打ち払いもう一度侍の国を立て直す。我々が行うは国を護る為の攘夷だ。卑劣なテロなどを一緒にするな」

 桂に続く様に何人もの人が入ってきた。桂の話を聞いた新八は非常に驚いた表情で言うのだった。

「攘夷志士だって !? 」
「なんだそらヨ」
「じょじょ?」

 久しぶりに聞いた攘夷、と言う単語にテレビに食いつく様に見ていた優姫は顔を上げて桂の事を見つめた。
 新八が攘夷志士について説明し終わると、真剣な表情になった銀時がはっきりと言ったのだった。

「……どうやら俺達ァ踊らされたらしいな。なァオイ、飛脚の兄ちゃんよ」

 そう言われ、怪我をした一人の男性がバツの悪いそうな表情をしていて、それを見た新八と神楽は声をあげた。

「あっほんとネ !! あのゲジゲジ眉デジャブ」
「ちょっ……どーゆー事っスかゲジゲジさん !! 」

 銀時は総て分かっているらしく一切動じずに桂に言い切った。

「全部てめーの仕業か桂。最近世を騒がすテロも、今回の事も」

 すると桂は腰に挿してあった刀を握り取って答える。

「例え汚い手を使おうとも手に入れたいものがあったのさ。……銀時、この腐った国を立て直す為再び俺と共に剣をとらんか」

 桂の説明で銀時が昔攘夷戦争に参加していた事を知り、新八は驚いた様子で声をかけた。

「…………銀さんアンタ……攘夷戦争に参加してたんですか」

「戦が終わると共に姿を消したがな。お前の考える事は昔からよく分からん」

 真顔な桂に対し、銀時はめんどくさいと言う気持ちが表情にしっかりと表れていて、ぼりぼりと頭を掻きながら返答した。

「俺ァ派手な喧嘩は好きだがテロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの」

 しかしすっと真顔になった銀時ははっきりと言い放つのだった。

「俺達の戦はもう終わったんだよ。それをいつまでもネチネチネチネチ京都の女かお前は!」
「馬鹿か貴様は!京女だけれなく女子はみんなネチネチしている。そういう全てを含め包み込む度量がないから貴様はもてないんだ」
「バカヤロー俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ、多分」
「何でも天然パーマの所為にして自己を保っているのか、悲しい男だ」
「悲しくなんかないね。人はコンプレックスをバネにしてより高みを……」

 段々話がそれていき、たまらず新八は大声で突っ込んでしまった。

「アンタら何の話してんの !! 」

 そのつっこみで話の路線が元に戻り話し合っている姿を優姫はじーっと見つめていた。難しすぎて何を言っているのか分からない。でもとっても大事な話である事だけは分かる。優姫は邪魔をする事も無く、ただただ静かに見つめている。
 そんな優姫の姿を先程からちらちらと見ていた一人の男性が思い出したらしく声を張り上げた。


「桂さん !! 」
「どうした?」

 男性はワナワナと優姫の事を指さしながら言うのだった。

「さっきから何処かで見た事のある娘だと思ったら……。この娘、真選組屯所に居た娘ですよ !! 」
「なんだと !? 」

 その一言にばっと全員の視線が優姫に移り、にぱっと自分の事を指さしながら優姫は言った。

「私?うん、私屯所に居るよ」

 にこにことしている優姫に銀時はぐりぐりっと頭を撫でながら言う。

「お――無事に屯所に行けたか、そ―か」
「うん」

 にこにことしている優姫の事をじーっと見てから桂は言ってきた。

「君は自分の状況が分かっているのか?我らは攘夷志士、真選組とは敵対する存在だぞ」
「私は屯所にいるだけ――」

 はっきりとそう言い切った優姫に桂は考え込みながら呟く。

「ふむ……使いようにすれば人質になりえるかもしれないな……」

 その一言に銀時は優姫の事をぎゅーっと抱きしめて言うのだった。

「テメー俺の優姫に何しようとしてんだ。テメェには渡すか」
「黙れロリコン」

 ビシビシっと別の意味で火花を散らしている銀時と桂を不思議そうに見ていると、気を取り直した桂が銀時に言い放った。

「とにかくお前の力がいる銀時。既に我らに荷担したお前に断る道は無いぞ。テロリストとして処断されたくなくば俺と来い。迷う事はなかろう、元々お前の居場所はここだったはずだ」

 もはや脅しとしか言えない桂の言葉に、困惑した表情で銀時の事を呼ぶ新八と神楽を見ていた優姫だったのだが、ふと聞こえてきた音に閉まっている襖の方を見た。

「…………せェェェェェ」
「ん?」
「…………を返せェェェェェェ」
「何だ今の声は……」

 明らかにこちらに近づいてくる声に気が付いた桂が言うのと同時に、襖が蹴り飛ばされる前に怒鳴り声が響いた。

「優姫を返せこの誘拐犯がァァァァァァァァァァァァ !!!! 」
「土方にーちゃん」

 バン!と派手に襖が蹴り飛ばされ、ざっと部屋に真選組が入ってくるのだった。その真ん中に立つ十四郎が殺意メラメラの表情で怒鳴った。

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