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問題8 銀髪の侍さんを探せ

 

「副長ォォォォ !!!! 」

 いつも騒がしい屯所だが今日は一段と騒がしいのだった。屯所会議室では十四郎を取り囲んで隊士達が口々に叫んでいる。

「局長が女にフラれたうえ、女を掛けた決闘で汚い手使われて負けたってホントかァァ !! 」
「しかも話によれば優姫ちゃん盗られちゃったとか聞いたんだけどォ !! 」
「女にフラれるのはいつものことだが喧嘩で負けたって信じられね―よ!」
「銀髪の侍ってのは何者なんだよ !! 」
「てか優姫ちゃん見てないんだけど何処行っちゃったの !! 」

 十四郎は煙草の煙を吐き出しながら落ちついた表情で答えた。

「会議中にやかましーんだよ。あの近藤さんが負けるわけね―だろうが。誰だくたらねェ噂垂れ流してんのは」

 煙草をくわえると十四郎は一言付け足した。

「優姫は近藤さんと一緒にいるっての」
「だけど沖田隊長がスピーカーで触れ回ってたぜ !! 」

 隊士に指指されている中、総悟は落ちついた表情でお茶をすすってからニタっと笑って言う。

「俺は土方さんにききやした。優姫の件はお菊さんが言ってやしたぜィ」
「コイツに喋った俺が馬鹿だった……お菊さんも余分な事話やがって」

 額に手を当てて後悔している十四郎に隊士が立ち上がって口々に言い始める。

「なんだよ結局アンタが火種じゃねェか !! 」
「偉そうな顔してふざけてるんじゃないわよ !! 」
「って事は何?マジなのあの噂 !! 」
「お菊さんが言ってたって事は確かな事なんだろう !! 」

 ぎゃ―ぎゃ―と騒いでいる隊士に十四郎はキレて机を蹴り飛ばした。

「うるせェェェェェェェぁぁ !! 」

 ガシャンと派手な音を立てて机がひっくり返ると、刀を抜いた十四郎が瞳孔をこれ以上ない位に開いて言い放った。

「会議中に私語した奴ァ切腹だ。俺が介錯してやる。山崎……お前からだ」

 そう言われ山崎は慌てて言った。

「え゛え゛え゛ !? 俺……何もしゃべってな……」

 そう言ったモノも他の隊士はシーンと黙り込んでいた為十四郎にはっきりと言われてしまう。

「しゃべってんだろうが、現在進行形で」

 山崎が焦っている中、切腹をさせようとしていると優姫の声と近藤の声が聞こえて来た。

「近藤に―ちゃん大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。おにーちゃん元気いっぱいだから」
「でも顔…………」

 優姫の心配する声を他所に襖がガララと空いて元気の良い近藤の声が挨拶してきた。

「ウィ―ス。おおいつになく白熱した会議だな」

 近藤はぴったりとくっついている優姫の頭を撫でながらいつもの様に言った。

「よ~~し、じゃあみんな今日も元気に市中見回りに行こうか」

 しかし近藤の左頬が物凄く腫れていて近藤が負けた、と言う事を物語っていて皆固まった。騒ぎの原因が自分にあるとはつゆ知らず、近藤は不思議そうに尋ねてきた。

「ん?ど―したの?」
「近藤に―ちゃん、大丈夫?」

 心配そうに声を掛けた優姫と近藤を見て、十四郎は大きく溜息をつくのだった。

 



江戸のトラブル娘
問題8   銀髪の侍さんを探せ

 



「え?みんなどうしちゃったの急に固まっちゃってさ」

 何も知らない近藤は本当に不思議そうな表情で、優姫と隊士を見比べて言っているのだ。
 近藤の頬の腫れを見た隊士達は近藤が本当に負けたと言う事実確認がされ、途端に大騒ぎだ。

「銀髪の侍ィィィィィィィ !! 」
「よくも俺達の近藤さんをォォォォ !! 」
「絶対に殺してやるゥゥゥゥゥゥ !! 」

 バタバタと駈けだして行った隊士達に近藤はぽか―んとした。会議室に残っているのは総悟と十四郎の二人だけであったのだから。
 総悟は近藤にぴったりとくっついている優姫に向かって笑顔で話しかけた。

「優姫おはようございやす。今日も良い天気ですぜィ」
「え……う、うん、そうだね」

 隊士達の殺意メラメラの熱気に怯えてしまったらしく、優姫はオドオドと返事をする。

「なァトシ。何みんな騒いでるんだ?なんか事件か?」
「思いっきりアンタの所為だろうがァァァァァァ !!」

 スパーンとせっかく総悟が戻した机を再び蹴り返して十四郎は言う。

「アンタが負けたからだっつ―の !! 」
「まあそう言う時もあるさ」
「そう言う問題じゃねェっつ――のォォォォォ !! 」

 本日も屯所は騒がしく始りを告げた。

「?」

 隊士達がほぼ出払ってしまっていて暇だなァ、と考えていた優姫が縁側を歩いていると何か紙が落ちていたので拾った。

「何か書いてある?えっと……『白髪の侍へ !! てめェコノヤローすぐに真撰組屯所に出頭してこいコラ!一族根絶やしにすんぞ。真選組』。えと…………」

 どう解釈すればいいのか分からなかったのだがとにかく此処に銀時の事を呼べば良いのだと解釈して優姫は万事屋へ出かけて行く事にするのだった。





「こんにちは~」

 ガララ、と万事屋のドアを開けると丁度人が来ていたらしく、銀時が話をしている真っ最中だった。

「優姫ちゃんじゃないの~~。ん~どうしたんだ?遊びに来たのか?」

 にこにこっと話しかけてきた銀時に来ていた老人が言った。

「オイ銀さんコノヤロー、人の話聞けっての」
「お仕事来たの?」

 優姫が尋ねると、銀時はめんどくさそうに答えてきた。

「なんかジジィが働いてる秀英建設人手不足だから雇いに来たらしいんだよね~」
「仕事持ってきてやったんだからもっと喜べこの駄目天パが」
「天然パーマを馬鹿にするんじゃね―よ」

 ぎゃ―ぎゃ―と言い合っている二人を見て、優姫は邪魔をしない方がいいかなァと考えだし、やりとりを黙って見ていた。

「とにかくさっさと来いつ―の」
「めんどくせ―ての。てか優姫来たから無理無理、優姫最優先だから俺」

 きっぱりと言った銀時に優姫は慌てて言った。

「あのね、お仕事来ちゃったならまた後で来るから私良いよ」

 すると銀時は素早く優姫の手を握りしめて答える。


「優姫ちゃんは本当に良い子だなァ。爪の垢神楽に飲ませてェよ」
「えっとね…………私此処で待ってるから、坂田に―ちゃんお仕事行ってきていいよ?」

 じーっと見上げながら優姫に言われ銀時は頭を掻きながら老人に向かって言った。

「テメ―早く終わらせろよ、優姫待たせたら可哀想だろうが」
「オメーがロリコン趣味だとは思わなかったぜ」

 取りあえず交渉成立したらしく、銀時は優姫の頭をぐりぐりと撫でて言った。

「んじゃあ銀さんちょっくら仕事行ってくるから優姫は此処でおとなし―く待っててくれよな」
「うん、いってらっしゃい」

 にぱっと答えた優姫に悶えつつ、銀時は依頼で出かけて行くのだった。


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