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出撃!烏野高校排球部!

 

 

「タオル良し!麦茶良し!」

 朝、リュックサックの中身を確認しながら、朔夜は上機嫌顔でいた。
 来るな一点張りだった影山が、部活に来ていいと言ってくれたのだ。それは嬉しいに決まっている。

「あ!忘れる所だった !! 」

 バタバタと慌ててキッチンへと向かい、冷蔵庫からタッパーを取り出し、中身が零れたりしない様にビニール袋に入れ、保冷バッグに入れる。
 そんな朔夜の姿をてまりが興味津々に見てくるので、頭を撫でながらに話しかけてやった。

「学校行ってくるからてまりはお留守番なー!犬は学校行けんのよ」

 言葉を理解しているのかいないのか。それでも反応をしたてまりを見て、朔夜は元気よく言う。

「突撃!隣の晩御飯 !! 」

 



オタク+オタク=?
9ページ目 出撃!烏野高校排球部!

 



「いたいたー!翔ちゃーん!田中せんぱーい!」

 体育館に着くと、朔夜は笑顔で中へと入ってきた。突然出現した朔夜に、初めて見る面々は誰だ?と言わんばかりの表情でいた。

「うんちゃんわざわざ来てくれたのか!」
「海野さん久しぶりー!なー、影山昨日からなんか変なんだよー」

 当たり前の様に話す日向と田中の姿に、菅原に声をかける人物がいた。

「スガ、あの子知ってるか?日向は兎も角、田中とも面識あるみたいだが」
「……あー、あは、は……」

 菅原はマズいとから笑いをした。早朝練習は四人だけの秘密であり、隠し通していたのだから。
 田中と仲が良い様子があると、上手い説明が出てこない。

「スガぱいせーん!」

 バチッと朔夜と目が合ってしまうと、朔夜は嬉しそうに菅原の所へと駆け寄ってくる。それにマズいと目を逸らしていたが、じーっと見つめてくる視線に菅原は根負けしてしまった。

「うんちゃん、久しぶりだね。相変わらず元気いっぱいだべな」
「うぃー !! 」

 ビシッと敬礼までされてしまい、菅原は乾き笑いが出てきてしまう。自分の事まで知っている、となると自然と繋がりを疑われてしまうから。
 取り敢えず深く追求される前に先に話してしまおう、と菅原は口を開いた。

「えっと、うんちゃん。この俺の隣に居るのが、男バレのキャプテンの澤村大地」
「キャプテン?」
「んと、部長、って考えてくれればいいべ。部活で一番偉い人、みたいな?」

 小首を傾げながら尋ねてきた朔夜にそう伝えると、朔夜は真顔で返してきた。

「……エロい人!」
「偉い人、な。大地怒ると怖いべー?」

 菅原にそう説明をされ、澤村を見た朔夜はヒィ!と怯えながら言う。

「怒ると怖い!」

 本気で怯えている朔夜を見て、田中も付け足す様に言う。

「そうだぞ、うんちゃん!大地さんは頼れるキャプテンだけど、怒るとめっちゃくちゃ怖いかならっ!」
「怖いキャプテン!」

 ぴゃ!と田中の後ろに隠れてしまうので、澤村はついつい指さしながらに言った。

「おい、勝手に俺のイメージ固められたぞ」
「あ、あははー」

 苦笑いをしつつ、朔夜に視線を送ってみると分かってくれたのか、朔夜は影山の元へと駆け寄っていった。
 それを見て澤村は影山の知り合いか、と菅原に声をかける。

「影山に女子の知り合いいたんだな。余りそう言うイメージ無かったから意外だ」
「あーうん……知り合いと言うかなんと言うか……」

 うまーく説明したい所だが、影山の彼女と何故接点がある、となったら上手い言い回しが思い付かないので悩んでしまう。
 遅かれ早かれ朔夜と影山の関係性は知られてしまうのたが、今日はちょっと早すぎる。
 どうしようか、と菅原が考えていると田中が横からサラッと言うのだ。

「うんちゃん、影山の彼女っすよ。付き合いたての」
「彼女っ !? 」

 流石に声を上げてしまった澤村に、朔夜は元気良く手を上げて答えてきた。

「はい!彼女です !! 」

 じーっと朔夜の事を見てから、菅原へと視線を移し澤村は言う。

「なんで影山の彼女とお前らが親しくなってるんだ?日向はまだしも……」

 これはマズい、と視線を泳がせていると、そんな菅原の姿を見て朔夜は得意げに答えるのだった。

「内緒!」
「内緒?」
「はいっ!」

 コクコク頷き言うので、何度か朔夜と菅原を見比べて、澤村は溜息を漏らしていた。バレたか、と緊張する菅原だったが、体育館に新たに入ってきた人物によって話題が変わった。

「潔子さん!今日もお美しい !! 」
「田中、五月蝿い」

 田中が膝を付きながら褒めちぎるのを軽くあしらっている女子が一人。見た感じ間違いなくマネージャーなのだろう。

「清水も来たべか」

 菅原がそう言うと、清水の視線がこちらへと向いた。

 バチッと朔夜と目が合うと、清水が興奮気味に近寄って来て言ってきたのだ。

「ねぇ!マネージャー興味ないかなっ?新入生のマネージャー募集しててね。バレーボールの知識無くても全然大丈夫だからっ」

 しかしマシンガントークの様に言われた朔夜が、清水の事を見て声を上げたのだ。

「ぴゃっ !! 」
「ぴゃ……」
「ぴゃ、って言ったな」

 菅原と澤村が言うのと同時に、朔夜が素早く田中の後ろへ逃げてしまうのだった。その姿には菅原達も驚いていて、背後に隠れられた田中が一番驚きながらに言う。

「おいおいうんちゃん、どうしたんだよ?」

 田中に声を掛けられ、こそりと清水の事を見た朔夜が小さく答えた。

「……綺麗なお姉さん」

 その様子には口数が少なくなっている影山も、驚き気味で見ていた。朔夜の言葉に澤村は理解したのか、口を開く。

「清水を相手にして、照れたのか」

 田中の後ろに隠れたまま、朔夜は答えてくる。

「はずかちー」

 美女が苦手なのか、と皆が思っていると田中が握り拳を作りながらに朔夜に言う。

「分かるぞぉ、うんちゃん !! 潔子さんは烏野の女神!余りの美しさに話し掛けられたら、恥ずかしくなってしまうよな !! 」
「田中、変な事を教えないで」

 そう言って田中を黙らせると清水は改めて朔夜に話しかけてきた。今度はゆっくりと優しく語り掛けるように。

「うんちゃん、だっけ?部活入る予定はあるかな?今男子バレー部、新しいマネージャー探してるの」

 話を聞いた朔夜はチラッと田中の事を見上げると、サッと影山の元へ逃げてしまう。がっしりとジャージを着ている中に逃げ込んで、しがみついてしまう。

「……何で俺のジャージの中に入るんだ」

 青筋を立て気味に影山が言うと、こそりと顔を出した朔夜は答えた。

「……バイトしたくて烏野選んだから、部活は入らない、んです。推しにいっぱい貢いで幸せライフぅ」
「……すまん、影山。何を言っているのか説明してもらってもいいか?」

 朔夜の言葉にそう言った澤村に、影山は真顔で答えていた。

「コイツの言っている事の七割は俺にも理解が出来ないので無理です」
「…………付き合ってるんだよな?お前ら」
「……一応」

 澤村の問い掛けに影山がポツリと呟いた所で、どうやら今日の対戦相手でもあるチームメイトの一年残り二人が姿を見せた。

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