疎との鳥 籠の禽
第7話 私とリボー ン
「よぉ」
「ん?」
私は一人校内を徘徊していた所、突然変な子に声をかけられた。
私と
第7話 私とリボーン
「アンタ誰?」
声の主の位置が低く、視線を下へ落とすとスーツを着込んでいる変な赤ん坊がいた。
なんだこの子はと思いながら、ひょこっとしゃがみ込んで尋ねると、その子はさらっと自己紹介をしてきた。
「俺はイタリアのマフィア、ボンゴレファミリーの殺し屋リボーンだ」
「ふーん、それはわざわざ遠くからお疲れ様だね」
何を言っているの全く理解出来ないけれど、取り敢えず話を合わせておく。それにしてもマフィア世界は大変なんだなぁ……。こんな歳から殺し屋になるのか。
「で、その殺し屋さんが私になんの用?」
マフィアに知り合いなんていないし、そもそも殺し屋で私の命を狙っているならば、声を掛けずに殺す筈。そもそも命を狙われる身の覚えも無いので、尋ねてみるとリボーンはさらっと私に言った。
「お前ファミリーに入れ」
「何処の」
「ツナのファミリーだ。アイツはボンゴレ十代目なんだぞ」
リボーンの言葉にこの間の事を思い出した。そう言えば隼ちゃん綱ちゃんの事『十代目』って呼んでたけど、変なあだ名だとは思ったけれど、そう言う意味だったのか……。
「じゃあ綱ちゃんはボスか」
取りあえず適当に話合わせればいいか。正直綱ちゃんがマフィアのボスになんて見えないし。適当に相手にしてキリのいい所で終わりにすれば良い筈。
「そうだぞ。とは言ってもまだ十代目になる為に修行中だけどな」
「大変だねぇ――」
「俺が家庭教師で鍛えてやってるんだ」
ドドン、と言い切るリボーンの事をじっと見た。ほへ――。今時の『ごっこ』遊びは凝ってるなぁ……。綱ちゃんも子供の相手大変だな。
「で、何で私の事誘うの?」
「お前雲雀恭弥と関わりあるだろう」
「アイツの名前出すと殴るよ」
雲雀の名前を出され、無意識に握り拳を作ってしまった。てか何でコイツ雲雀と私の事知ってるんだ……。エスパー?エスパーか?
「雲雀は将来ファミリーに必要な人物になるからな」
「だったら好きに誘えば良いじゃん。私関係ないし」
そうそう、私と雲雀は無関係、無関係――。雲雀なんて人知らない知らない。
誰?小鳥さん?ああ、そう言えば雲雀って種類の鳥がいた気がする。小鳥さんね。
「そうでもねーんだな、これが」
無関係です、と言う私の姿に対し、にぃっと笑ってリボーンは言った。
「アイツの性格知ってるだろう?お前がファミリーに居れば、多少なり来るかもしれないだろう」
そう言い切ったリボーンの発言に私の思考が止まった。暫く思考回路が上手く回らずにいたけれど、ゆっくりと理解が出来た。………ん?つまりそれって………。
「私をエサに雲雀恭弥ファミリーに入れるって言う魂胆かァァ !! 」
私の存在を利用して、雲雀の事を引き入れようとしていると断言された。人の事なんだと思ってるんだ、この子供はァ。
「そうだ」
「しかも言い切っちゃったし !! 無理無理絶対嫌だからね!」
雲雀となんか関わりたくないので、ぶんぶんと手を振ってファミリー入隊?を断ると、にやっと言い付け足された。
「山本の奴もファミリーだぞ」
「……たけちゃんも?」
「そうだ」
たけちゃんの名前に全力拒否していた気持ちが少しだけ薄らいでしまう。てか何時の間にそんなにの入ったんだろう………。
たけちゃん人が良いからなぁ……。綱ちゃんの事も変に気に入っているみたいだし、綱ちゃんだから、って感じしかしない。
「たけちゃんがいるのかぁ………」
「それなら文句ないだろう」
「ん――――」
リボーンの言葉に真剣に悩んでしまう。雲雀は嫌いだが、たけちゃんは好きだ。
雲雀を呼び寄せるエサになるのはごめんだが、たけちゃんと遊べる機会が増えるなら良いかもしれないなぁ……。
雲雀を嫌だと言う気持ちと、たけちゃん達と遊べる気持ちを天秤に掛けて悩む。いや、悩む間もなくたけちゃん達を選ぶのだけれど。
そんな事を腕を組んで考え込んでいると、階段を慌てて駆け下りてきながら叫んだ奴がいた。
「リボー ン !! 何してるんだよ !! 」
息を上げて駆け下りてきたのは、マフィアボス(らしい)の綱ちゃんだった。ぜーぜーと呼吸をしている綱ちゃんは、私と目が合うと目ん玉飛び出ているのではないかと言う程の驚き顔になった。
「あ、綱ちゃんやっほ」
「何で音羽とリボー ンが一緒にいるの !? 」
異色過ぎる組み合わせだったのか、綱ちゃんはかなり困惑しているらしい。まぁ、当然だけれど。初対面だし。
そんな綱ちゃんに対して、リボーンはあっさりとさも当然、と言った表情で説明していた。
「今山本音羽をファミリーに誘ってた所だ」
「何勝手な事してるんだよ !! 」
リボーンの言葉を聞き、綱ちゃんは階段を慌てて降りつつ、焦った様子で私に向かって言う。
「リボーンの言う事本気にしなくて良いから!忘れちゃって平気だから !! 」
「ボスは大変だねぇ」
「マフィアのボスなんか俺ならないから !! 」
私の反応に必死に叫ぶ綱ちゃんの事を一蹴りして、リボーンは私に向かってハッキリと言う。
「取りあえずお前、ファミリー決定な」
「え、何?否定権無しなの?」
「おう」
否定権はない、と言わんばかりに言われてしまい困った表情で言う。
「何ソレ困るなぁ~~。将来の職業『マフィア』?天国の家族泣いちゃうよ。別に今の所、将来の夢とか無いけどさぁ」
「マフィアも悪くねーぞ」
「リボーン !! 」
蹴られたダメージから復活したらしく、起き上がった綱ちゃんは怒り言う。
「音羽は友達だし女の子だし、お前の変な世界に巻き込むなよ!」
「お前は分かってねーな」
綱ちゃんの言葉にくるっと振り返ってリボーンは言い切ったのだ。
「音羽は将来ファミリーにとって、外せない奴になるんだぞ。ぼやぼやしてると他のファミリーに盗られるだろう」
「どういう意味だよ !! 」
意味の分からない言い分にリボーンに向かって言っていたけれど、綱ちゃんはハッキリと言われていた。当事者である私等無視して。
「音羽は生まれもってのマフィアファミリーの才能持ってるだぞ。その内才能が開花するから、開花する前の今の内に入れておくしかねーだろうが」
「え、何々?私そんな才能持ちなの?てかマフィアの才能って何?」
私が尋ねるとリボーンは、重要な事は今は告げない表情をしつつも、しっかりと頷く。対照的に綱ちゃんは相変わらず慌てている。
「音羽信じちゃ駄目だって!ろくでもない世界だから !! 」
「あははは、大丈夫だって。どうせマフィア『ごっこ』でしょ?お遊びくらい付き合うって」
子供のお遊びに本気になったって仕方ないし、笑って言うと綱ちゃんはなんとも言えない表情でいるのだった。
「まあ取りあえず時間だから私行くね」
「おう。今度ツナの家に来い。他のファミリー紹介してやる」
「あはは、本格的だねぇ」
リボーンの誘いにへらへらと笑って、私は二人と別れ教室へ戻っていった。
(2022,3,31加筆修正 飛原櫻)